こちらの記事は、Digital Insurance Agendaの記事を翻訳したものです。
Digital Insurance Agenda管理者の許可を得て掲載しています。
本記事は、The DIA Communityの創設者であるRoger PeverelliとReggy de Feniks(注1)によって、2019年4月1日に書かれたものです。
先月のDIAへのインタビューの際にマッキンゼーのヨルグ・ムスホフ氏は、保険業界のデジタル変換の進展に関して明るい未来を描きました。この考えに基づいて、マッキンゼーのパートナーであるサイモン・ケイズラー氏に新しいデジタルモデルと今後の展望についてお伺いしました。
サイモン・ケイズラー氏は、InsurTechを含むヨーロッパの全オンライン保険販売活動を統括しています。彼の専門分野は、サイバー攻撃対策の強化、保険販売の変革、オムニチャネルおよびマルチアクセス、高度な分析、顧客体験、セールスの生産性向上プログラムなど多岐にわたります。マッキンゼーはDIAのナレッジパートナーであり、サイモン氏は、2018年版DIA Munichでビジョンを共有した思想的リーダーの一人です。DIA Amsterdam 2019で同様の基調講演を予定しています。
DIA Amsterdam 2019(注2)は6月25〜27日に開催されます。チケットはまだ入手可能です。登録するにはこちらをクリックしてください。
質問者:DIAでは非常に多くのInsurTech企業を目にします。どの企業も、業界の数々の革新もあって特徴的な製品とビジネスモデルを持っています。急成長中のInsurTechの展望をどのようにお考えですか?
サイモン氏:既に長年InsurTech分野をサポートしてきましたが非常にエキサイティングです。2012年以来、InsurTech分野には100億ドル以上が投資されています。これはかなり大きい数字です。しかし莫大な投資金額よりも目立ったのは、多様化・専門化・コラボレーションの3つの傾向です。
まず多様化についてお話します。InsurTech黎明期における保険会社は、物損・人身損害の販売だけに焦点を当ててきました。今ではむしろ、ビジネスバリューチェーン全体および全ての事業分野にわたってデジタルソリューションを生み出していることを強調しています。これは、デジタル技術がより多くの分野で効果を発揮しているいることを意味します。
2つ目の傾向である専門化は、InsurTechが成熟してきたことによるものです。InsurTech企業は非常に複雑で規制の厳しい保険業界で生き残るために、社会課題を解決していることを証明する必要があります。イノベーションにはゲームチェンジャーとリーダーが必要ですが、忍耐力と堅実なGTM戦略も必要です。
したがって、3つ目の傾向であるコラボレーションが登場します。初期のInsurTech企業は「デジタルアタッカー」として、伝統的な保険業界を混乱させようとしていました。けれども現在は、彼らが生き残るためには既存の業界と協力する必要があることを認識しています。現在、既存の保険ビジネス全体を揺るがすInsurTech企業は10%未満であり、約3分の2がバリューチェーンの特定の部分に焦点を当て、既存の保険会社と有意義に統合したいと考えています。問題はもはや「InsurTech企業 vs 従来の保険会社」ではなく、顧客にとって本当の価値を生み出すためどのように協力し合うかということです。
質問者:デジタルテクノロジーが保険業界に進出しているように思われます。しかし、実際の市場における「デジタル」そのものによる効果はどうですか?
サイモン氏:私たちはデジタルプレーヤーが市場をリードしているのをよく見ますが、その理由はいくつかあります。たとえば自動車保険に加入する場合を考えてみましょう。平均的なデジタルプレーヤーと最高のデジタルプレーヤーとを比較すると、全てのKPIにかなりの差があります。最高レベルの生産性は市場進出アプローチを含む、真に「徹底してデジタルを取り入れた」ビジネスモデルによって牽引されます。成功した新規プレイヤーと平均的な既存のプレイヤーとの間には、大幅な格差が見られます。
質問者:私たちもそのように感じます。けれども、私たちの域内市場の1つであるオランダでは、デジタルピュアプレーヤーのInShared(注3)が明らかにリードしており、市場で出る杭となっています。
サイモン氏:そのデータはマッキンゼーが長い間予測してきた、デジタルに対応した企業は従来の企業の業績を上回るという傾向を強調しています。デジタルテクノロジーがすでに幅広く統合されている自動車保険では、成長性と収益性の両面でデジタルプレーヤーが市場をリードしていることがわかります。デジタルプレーヤーの40%が平均を上回っており、残りのうち35%がマーケットシェアを獲得しています。わずかに収益性が低いことは、規模が小さいことが原因であることが多いです。
質問者:言い換えれば、既存の企業も含めて新しいモデルは市場の平均を上回っていますね。
サイモン氏:新しいデジタルモデルは注目を集めています。しかしすべての企業が勝てる訳ではなく、普遍的な「デジタルの勝ち方」はありません。ビジネスモデルと事業計画に対して、どのデジタル技術が最適に機能するか検討することが重要です。そして、関連するデジタル成長の要因に焦点を合わせ、それを拡大することも重要です。また、大手企業がデジタル保険業界でも成長し、収益を獲得していることからも、「ウィナー・テイクス・オール」の傾向が強く見られます。
質問者:新しい産業モデルはどのようなものでしょうか?既存の企業とInsurTech企業はそれぞれ何をもたらしますか?
サイモン氏:新しい業界モデルは、既存の保険会社とInsurTech企業とのコラボレーションによって形成されるでしょう。協働する中で、両者はそれぞれの強みを出し合うべきです。既存の保険会社は、信頼できるブランド、ロイヤルカスタマーの基盤、高い成熟度、そして投資力が強みです。一方でInsurTech企業は、シンプルさと迅速さ、革新的な文化を持っています。彼らは、ますます多くの顧客が求めるようになってきた真のデジタル体験を提供し、これを細かなデータ分析と組み合わせることで、プロセスと顧客接点を継続的かつ迅速に改善します。
質問者:つまり、産業モデルには伝統的な強みと新しいスキルが必要ということですね。注意すべき他の要因はありますか?
サイモン氏:既存産業と新興企業がそれぞれの強みを活かした方法で一緒に事業に取り組むことが重要だと思います。例えば多くの保険会社にとって、強力で認知を得られるブランドを構築することが重要な課題の1つです。従来の企業と直接対決できるように、InsurTech企業が資本のほとんどをマーケティングに投入する必要があるでしょうか。おそらくその必要はありません。うまくいけば新しい業界モデルは両方の長所を組み合わせて、変化する顧客ニーズに対応し、最終的に収益性を向上させるでしょう。
新しい産業モデルがどのようなものか明確になり始めていますが不確実なことも多く残っています。それでも、私は未来に対して非常に楽観的であり、そして興奮しています。
(注1)The DIA Communityの創設者であるRoger PeverelliとReggy de Feniks
http://www.digitalinsuranceagenda.com/author/roger-peverelli-and-reggy-de-feniks—founders-the-dia-community/
(注2)DIA Amsterdam 2019
https://next.digitalinsuranceagenda.com/
(注3)InShared
https://www.inshared.nl/
原文は以下のリンクよりご覧になれます
https://insurtechnews.com/insights/a-look-at-deutsche-familienversicherungs-2018-in-numbers