Lula Technologies:保険ライセンス試験に合格した初めてのAI「GAIL」

ITC Vegas 2023で注目を浴びたスタートアップLula Technologies。
2023年10月に、フロリダ、テキサス、ニューヨーク、カリフォルニアの保険免許試験に合格し、保険免許を取得した初めてのAIになった。

カーシェアリングアプリとして創業

Lulaはフロリダのマイアミを拠点とし、25歳の双子の兄弟、マイケルとマシュー・ベガ=サンズによって設立された。元々は大学生向けのカーシェアリングアプリとして2016年にスタートしている。ある晩にピザを食べたくなった彼らは、キャンパスで車を持つ余裕がなく、他の学生から車を借りられるアプリがあれば便利だと思い立った。18歳が制限なく車をレンタルできるようにした最初の会社となった。

アプリのローンチ後8日で、AppleStoreトップアプリのひとつになった。その後中退して1年以内には全米500以上の大学のキャンパスで車を利用できるまでに浸透した。

ここで保険の課題にあたる。彼らは車のレンタルに保険が適用されているかを確認する必要があったが、保険会社に断られてしまったのだ。そこから、独自の引受方法や引受ツールを開発して業務に取り入れていった。会社が成長するにつれて、自分たちの強みが、大学生向けのカーシェアリングアプリではなく、保険インフラのソフトウェアだということに気づき始めた。2020年、あらゆる規模の企業に保険インフラを提供することをミッションとし、現在のLulaの構築にピボットをした。

 

保険インフラとしてのLula

ピボットしてからすぐ、2020年8月には同社はMVP(最小実行可能製品)を立ち上げ、それ以来最初の4ヶ月で黒字を達成した。

現在、Lulaはトラック運送会社向けに車両保険を購入できるプラットフォームを提供している。保険パートナーを通じて、顧客審査、不正検知、ドライバー履歴チェック、保険契約管理、保険金請求処理など、テクノロジーを駆使した「完全に統合されたサービス」が特徴だ。

トラック運転手が荷物の積み込みや配達をするたびに、月々の保険料を支払う代わりに、道路を走っている2~3日間だけ保険料を支払うことができるようになる。また、誰かがコンテナを輸送する場合、販売時点で貨物保険を追加し、追加の補償を得ることができるという。フリート・オペレーターは1日ごとに支払うことも1マイルごとに支払うこともできる。年間を通じて車両を使用しない企業にとって、よりコスト効率の高いものとなる。

トラック運送業以外にも、レンタカー・プロバイダーや車両を保有する他の企業にもプラットフォームを販売している。

中核となる保険購入機能の他にも多くのツールを提供している。そのひとつは、フリート・オペレーターが保険金請求を迅速に行えるように設計されたツールである。Lulaによると、ユーザーは自動化機能を利用することができ、このプロセスにおける手作業を減らすことができるという。保険金請求後、審査プロセスにおける重要なマイルストーンに関する最新情報を提供する。

Lulaの顧客数は2022年2月時点で100社弱だった。2023年8月時点では約4,000社に達している。売上も増加の一途をたどり、昨年2月以来、売上は20倍に伸びているという。約半年で黒字化し、1年以内に年間経常収益1億ドルの大台に乗ると見込んでいる。

https://www.lula.com/about-us

先進的な人工知能GAIL

注目を浴びている人工知能のGAILは、AIとして初めてフロリダ、テキサス、ニューヨーク、カリフォルニアの保険ライセンス試験に合格した。これにより、保険業界における規制ガイドライン、法的枠組み、ワークフローに関する深い知識を有していることが証明された。GAILはLulaの内部データセットや州の保険法典を利用して学習しし、その知識は非常に高度で、トレーニングを行った講師を訂正するレベルに達している。

GAILは2024年に商用に導入される予定だ。音声とテキストを駆使したAIツールを提供することで、保険の販売や顧客サービスを人間らしい品質で行うことができる。既に数百万ドルの予約注文を獲得しているという。

「保険は長年、新しい技術を採用していないと批判されてきましたが、私たちはそれを常に誤りであると考えていました。私たちは今日、その物語を終わらせることができ、保険の世界に生成AIを導入する先頭を切って非常に嬉しく思っています」とLulaのCEO、マシュー・ベガ・サンズは述べている。(出典:https://www.lula.com/blog/GAIL-passes-exam)

GAILの導入により、ポリシー管理、クレーム処理、顧客サポートなど、保険会社はより迅速かつ効率的に業務を行うことができるようになる。また人間らしい対話により顧客に対してパーソナライズされたサービス提供をすることが可能になる。

以下は、GAILの音声AIにより、スティーブジョブの音声で保険の提案をしている動画だ。

多くの人が保険業界への生成AIの到来を祝っている一方で、自分たちの仕事への影響を懸念する声もある。しかし、Lula Technologiesは、GAILの目的は人間を置き換えることではないことを強調している。むしろ、GAILは連絡スケジューリング、顧客資格の確認などの定型作業を引き受けることで全体的な生産性を向上させ、代理店が顧客関係や高付加価値サービスの提供に集中できるように支援する。

GAILは、AIが保険業界にもたらす可能性を象徴しており、将来的にはより多くの業界での応用が期待されている。

Lulaについて

Lula Technologiesは、2016年に創業し大学生向けのカーシェアリングアプリをリリース。2018年5月にプレシード、2019年5月にコンバーチブルノートで調達。2020年にLula Technologiesとして創業、車両運行会社向けの保険ソフトウェアの提供を開始。
2021年1月にシードラウンドを調達し、2021年7月にシリーズAラウンドで1800万ドルを調達。
2023年8月には、シリーズBラウンドで3,550万ドルを資金調達したことが発表されている。

 

参考)
https://www.crunchbase.com/organization/lula/company_financials

Miami twins raise $18M for Lula, an insurance infrastructure upstart


https://siliconangle.com/2023/08/03/lula-raises-35-5m-funding-auto-insurance-platform/
https://www.lula.com/blog/GAIL-passes-exam