医学が知のみに頼るだけではなく工学や統計学、または経済学といった総合的な立場に基づき医療のあり方を正しく問う医療テクノロジーアセスメント。医学判断学からの関連分野でHTAとも呼ばれている。このHTAは保険業界にどのような変化をもたらすのだろうか。
■ビッグデータを用いた予防医学
インターネットを通じて得ることのできる、個人の行動履歴やGPSを用いた位置情報、ウェブサイト閲覧に関する情報をビッグデータと呼んでいる。このビッグデータの分類を総務省は、「国・企業・個人」と大きく3つに着目している。ここでは、個人にひもづいている「パーソナルデータ」に着目したい。
個人のパーソナルデータとは、日々生活を送る中で収集されるデータであり「ライフログ」と呼ばれる。このデータが予防医学の活用に重要となる。厚生労働省が構想に掲げている、地域包括ケアシステムがこれにあたる。
このシステムは、在宅介護を中心としており、地域の中規模病院と連携させた医療・介護・予防を包括しているため、医師や看護師と介護士とケアマネージャーなど双方の従事者たちが一同に関わっている。これらの活動を通じて得ることのできるデータをお互いに共有して分析をすることによって、予防において有効な働きをみせている。
■リスクを細分化することで保険が変わる
保険のビジネスモデルは、リスクに対する保障が基本となる。過去10年におけるデータ活用は、主に請求時や支払い時に用いられていた。これらは、保険金などの給付時にミスを防ぐためのデータ分析といった側面があったと言える。しかし、これからはリスクをより一層と詳細かつ細分化するための分析が必要となると有識者は捉えている。
実際に、健康に関わるリスクを注視して例を挙げてみよう。保険会社は契約顧客の現在の状況や既往歴、日常の生活環境や習慣、家族について過去から現在の医療統計データをはじめとした莫大な情報をまとめて分析をおこなうことによって、的確にリスクの分析が可能となる。先述した地域包括ケアシステムによって、データを用いた商品開発が合理的になり、保険が変わる。例えば遺伝子分析によって事前に疾病予測が可能となることで、確実性が増してリスクの持つ前提が変わる。それによって、保険も変わるということは当然のことだろう。
■保険業界の未来を担うビックデータ分析
リスクをデータ化することで、詳細な分析が可能となる。正確にリスクを捉えることにより、顧客のニーズに則した保険商品をアプローチすることが優位性を生み出す。今後はさらに医療業界はITを活用した取り組みが活発となっていくだろう。AIやIoTなどの普及から、医療やヘルスケアに用いるデータは圧倒的に増加する。ライフログをはじめとしたビッグデータを有効に活用できるか否かによって、保険業界の未来を担っているといっても過言ではないだろう。
ライター 大城あしか