競合のない新たな需要、”blue ocean”を保険ビジネスで作り出すにはどうするべきか

2017/11/27、著者:Luciano Pezzotta and Andrea Silvello

 

ここ数年で、保険会社は、新たなテクノロジーが産み出した巨大なチャンスを手にしようと競争してきた。そして、InsurTech(インシュアテック)スタートアップ企業の脅威を、彼らと協調関係を築くことの方が賢明であると学んできた。その結果、現在のところ、収入や利益性の大きな損失を回避するものとなっている。

しかしながら、急速に進歩し続けているのはテクノロジーだけではなく、アメリカと中国の大手IT企業も同様で、グローバル的な拡大という野心を持って、新たな産業へと挑戦している。保険契約者は、同等の水準での利便性と取り組みを保険会社に求めており、大手企業による無慈悲なグローバル市場の支配が進行すれば、これらの企業は保険会社の領域を侵犯してくるのではないかと恐れ始め、そのように市場を捉えるものも中にはいる。

これまでの事例では、大手企業の脅威は「明白なものである」とは程遠いものである。保険会社には、競争力を強化することができる強固な取引基盤や、産業に対する”深い”ノウハウ、そして確固たる経済基盤を持っている。Google Compareという自動車保険のアグリゲイターを例に挙げると、彼らはアメリカとイギリスで事業を立ち上げたものの、成功とは程遠い状態にある。

しかしながら、長期的視野での利益の成長を求めるならば、保険会社は、急速な変化をもたらさない市場の創出機会にも同様に関心を寄せるべきである。保険会社とInsurTechスタートアップ企業も含めて、我々の多くは、テクノロジーと市場の急速な変化を同一視しており、そのもとでは、新たな市場は、既存のものを排除して入れ替わるようなソリューションによって創出される。たとえば、KYC technologiesでは、対面でのやり取りの需要に取って代わっている。

実際にKim教授とMauborgne教授が、彼らの世界的ベストセラー『Blue Ocean Strategy』の続編である『Blue Ocean Shift』で指摘しているように、破壊への注力は自分の力を制限することにつながり、そして新たな成長、新たな市場を創造する機会を半減させてしまうかもしれない。我々は新たな市場を創造する上で、必ずしも既存の市場を破壊する必要はないということを認識することが大切である。破壊は既存の顧客が直面している問題へのより良い解決策を打ち出す一方で、破壊なきイノベーションはその産業内の潜在顧客を目標にすること、または全く新しい問題を解決することで、”blue ocean”を創造する。

手頃な価格で利用できるマイクロ保険商品を未開拓の層に提供することでblue oceanを作っているBIMAの例をとる。BIMAは2010年にガーナで創立され、急速な成長を遂げ、現在はアジアからラテンアメリカ、アフリカにかけて2,400万人の顧客にマイクロ保険を提供している。顧客の90%以上は一日10アメリカドル未満で生活しており、そして4分の3は初めて保険を利用しているという。

発展途上国は一般的に耕作と農業に基づく経済をなしており、大惨事の場合を補うために健康保険から生命保険、突然の死や病気、農業やモノの保険など幅広い範囲の保険商品を必要としている。これらの国ではマイクロ保険はすでに1億3,500万人をカバーしており、それは年間成長率8~10%と推計される潜在可能性のある市場全体のわずか5%を表しているにすぎない。

同様に、マイクロ保険は先進国において行き届いていない層にいる、より包括的な商品を手にするのが困難な人々にも購入されうる。

しかしながら、マイクロ保険は単に発展途上国、先進国両方の低所得層のために手頃な価格で提供されている保険ではない。これは保険を売って、新しい需要を作る包括的な新しい方法なのだ。実際に、既存の保険商品を手にすることのできる消費者は、事件が起きるか、仲介者によって刺激されるまで保険の必要性を認識することはないだろう。

結果として、彼らはしばしば、保険の必要性または特定のリスクに保険をかけるという選択肢に気づかない。意識が問題ではないとき、保険会社は複雑で不可解な、個人が喜んで従えない、長くて煩雑な購入プロセスを必要とする契約に向き合うことになる。

当然のことながら、最近の研究結果によると、ミレニアル世代は最も保険に加入していない世代であり、どんな健康保険、生命保険、賃貸保険、就業不能保険にもほとんど加入していない。ミレニアル世代はいわゆる”connected generation”という区分のことで、巨大なblue oceanであり、Y世代、サイレント・ジェネレーション、ベビーブーマー、X世代を含む。彼らの世代はモバイルで購入する習慣へとシフトしている。テクノロジーによって権限が与えられ、これら全ての個人はいつでもどこでも複数のプラットフォームとスクリーンにアクセスできる、信頼のできるサービスを探している。彼らの保護ギャップ(社会的に適切な保険の購入量と、実際に購入された保険の量の差のこと)は3.5兆ドルを超えると見積もられている。

“connected generation” に保険を売る上で大事なことは、彼らが一日中触っているスマートフォンとの接点に向き合って、正しい提案をすることだ。

保険会社に向けて顧客中心のモバイル保険の提案とともにblue oceanを開放することはNeosuranceの使命である。

同社は私達が共同創業した世界発の仮想人口知能技術を基盤に持つ保険エンジンを提供するスタートアップ企業である。

Neosuranceは顧客のスマートフォンに対して、適切なタイミングで適切なカバーを提供することを推進するような、保護への需要を活性化させている。そしてそれは、顧客を 感情的で衝動的なスモールチケットの購入へと導く。保険の購入は、“理性のある衝動“へとやがて変わり、その取引は伝統的な”売れた時点“で完了するのではなく、”需要を生んだ時点”で完了するようになる。これは、顧客体験が完全にペーパーレスで、20秒以下で完了するから実現できるのである。

Neosuranceはどんなアプリにも簡単に埋め込むことができ、パートナーに対して優しい“プラグアンドプレイ”SDKに依拠している。これによりキャリア会社は手の内にあるオーディエンスだけをターゲットにするのではなく、顧客の保険に対する計画を彼らのコミュニティパートナーの初期段階あるいは顧客体験に合わせてそれぞれ作り上げていくことができるようになる。そうしていく中で、保険会社(再保険会社も同じく)は人々の共通の利害やパッションを守ることで顧客へのエンゲージメントを最大化することができ、またデジタルコミュニティーの全体的な生態系を作り出し、需要に満ち溢れたblue oceanを作り出すことができるようになるだろう。

近い将来、保険会社が集めたデータを有効活用し、また行動プロファイリング、サイコグラフィックを利用し、状況によって分析を行うようになるにつれて、blue oceanにおけるより多くの機会が生まれることになるだろう。特にキャリア会社は、顧客体験の隅々にまでわたる彼らの役割を、単なる“売り手 (ペイヤー)”から、アクティブな“プレイヤー”にアップグレードすることで、顧客との接点を何倍にも増やし満足度を上げ、最終的には保険と非保険商品/サービスを抱き合わせ販売で売り出せるような新たな機会を作り出すことにもつながるだろう。

 

この記事は「InsurTechnews」の記事を翻訳・転載したものです。

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