中国平安保険のサクセス・ストーリーの背景に迫 Part1

こちらの記事は、DIGITAL INSURANCE AGENDAの記事を翻訳したものです。
DIGITAL INSURANCE AGENDA管理者の許可を得て掲載しています。

中国平安保険(Ping An Insurance Company of China, Ltd.)は中国で最も革新的な金融グループであり、世界最大の保険会社の1つである。エコシステム戦略で成功している企業となると、間違いなく世界的なベストプラクティスだろう。

中国平安保険のチーフ・イノベーション・オフィサーであるJonathan Larsen氏はこのインタビューで、成功の背景にあるビジョンと教訓を語っている。Jonathan氏は新しい技術、プラットフォームなど、中国平安保険のビジネスモデルを中国国内にとどまらず、世界に広める責任を負っているという。

彼はまた、フィンテックとヘルステックへの投資を行っている10億ドルのファンドである「Ping An Global Voyager fund」の会長兼CEOでもある。DIA(Digital Insuarance Agenda)ミュンヘン2018に登壇して同社のビジョンを共有した思想的指導者であった。DIAアムステルダム2019でも同様の講演が予定されており、2019年6月25~27日に開催される。

中国平安保険(Ping An Insurance Company of China, Ltd.)について

中国平安保険は世界で最も価値のある保険グループ企業である。2018年上半期の保険料収入は約600億ドルであった。中国の生命保険・総合保険業界を牽引している企業であり、中国最大の小売オンラインブローカーとの証券ビジネスや、AUM(Assets under Management:運用資産残高)が約7000億ドルの資産運用ビジネスを展開しており、約5000億ドルのバランスシートを持つ銀行を所有している。さらに「エコシステムを支えるテクノロジー」 から発展して、新しいビジネスを広げている。これらの新しいビジネスの例を以下に紹介しよう。

・「Lufax」:世界最大のデジタル資産管理プラットフォームだ。約20万人の顧客にサービスを提供しており、AUMには約60億米ドルの資金がある。また、オンライン融資事業を通じて中国で最大のノンバンクの貸し手でもある

・「Ping An Financial Cloud」:中国で営業している金融機関にクラウドベースのサービスを提供している。これは規制されたサードパーティのクラウド環境である

・「Ping An Good Doctor」:世界最大の遠隔医療プラットフォームで、約2億5000万人の登録ユーザーがいる。同社は2018年に香港に上場した

・「Ping An Wanjia Clinic」:中国の約50%の個人クリニックをサポートするクリニック企業向けプラットフォームである

・「Ping An Health Connect」:不正行為防止や過剰請求管理などの幅広いサービスを提供し、中国の医療費の50%をカバーする国家健康保険制度をサポートしている

・「Ping An OneConnect」:OneConnectは中国平安保険のテクノロジーの多くをもっている会社で、中国平安保険から独立してスケールアップした。最近では海外の他の金融機関にエンタープライズサービスを提供している

これらを総合すると、中国平安保険は1億8000万社以上の金融サービスの顧客を持つ、1兆ドル規模のバランスシートを持つ企業である。より広範なデジタル・エコシステムにおいては5億人以上のユーザーを抱えている。

2018年上半期において、中国平安保険は850億米ドルの収益と90億米ドルの純利益を生み出している。

質疑応答

質問者:中国平安保険の歴史を教えてください。そして、このような大企業までに成長できた要因は何だと思われますか?

Jonathan氏:中国平安保険は1988年にPeter Ma氏によって設立されました。現在も会長兼CEOである同氏は、会社発展の指針となるビジョンを提供してきました。中国平安保険は保険業として始まり、幅広い金融サービスへと多角化し、中国では革命的だった「金融業を統合する」という概念を生み出しました。現在でも、中国平安保険は金融機関の中で最も幅広いライセンスを保有しています。

世界の大部分が金融危機に集中していた2007~2008年の時期を振り返ってみましょう。Peter Ma氏は「Alibaba」と「Tencent」が急速に中国の新しいデジタル経済をどのように作り出しているかを考察していました。中国平安保険を伝統的な金融ビジネスとして築き上げてきたので、デジタル経済には全く新しい課題とチャンスがあることに気付きました。そこで会社全体の方針をテクノロジー主導へと切り替えたのです。

質問者:それはかなり難しい挑戦でしたよね?

Jonathan氏:そうですね。最初はクラウド環境へと移行しました。これには、社内のすべての従来のプラットフォームの置き換えが含まれています。また、テクノロジー主導の大規模な研究開発を開始しました。例えば、自動応対、クライアント認証用の顔認識プラットフォームや独自のボイスプリント技術です。1日に100万件もかかってくる電話をすべてテキスト化して機械で処理できるように開発を進めました。

また、多くの新規事業を立ち上げました。「Lufax」「Good Doctor」「OneConnect」などが良い例です。現在立ち上げ中の企業がさらに15社あります。これらの会社のフェーズは様々で、多様な業界で展開しています。中国平安保険の金融および広範なエコシステムを基盤としています。

質問者:そのような新規事業の立ち上げは、正に目に見える成果だと思いますが、成功要因は何だと思いますか?

Jonathan氏:Peter氏と会社がどのような将来を描いているかということを把握することが重要です。まず、彼はデジタル経済の出現が我々の成功をもたらしている要因であると考えています。これは140万の保険代理店、偉大なブランドや多くの資本の登場にも結びついています。もちろん、これらは近い将来、我々のビジネスにとって重要であることは間違いない。
もう1つは、膨大なデータから価値を生み出して、クライアントのニーズに応えることです。これらのインサイトは中国平安保険の戦略の原動力となっています。

質問者:AlibabaとTencentの成功は、保険業界の進化の指標となっていましたか?

Jonathan氏:今日、AlibabaやTencentのような大企業で革新的な金融機関は、中国や全世界にとって特に重要な存在です。しかし、多くのイノベーションが金融業界以外から生まれていることは認識しなければなりません。30年前はほとんどのイノベーションは一部の製造業、少数の大手企業と少数のテクノロジー・ベンダーによって生み出されてきました。ですが今日、ほとんどのイノベーションは金融業界以外から生まれています。例えば、Fintechのベンチャーキャピタルから年間約300億ドルの投資が見込まれています。

質問者:現在のフィンテック業界は中国が牽引しているのでしょうか?

Jonathan氏:世界に対する中国の貢献度はますます上がっており、重要な国になっています。中国で3つの分野がテクノロジーによって変貌しました。

まず1つ目に支払い方法です。キャッシュレスの普及により中国ではもはや現金はほぼ使われなくなりました。

2つ目に、金融仲介業は現在、デジタルプラットフォームに大きく支配されているということ。

3つ目は個人融資業界にも同じことが起こったということです。世界の他の地域でも同様の傾向が見られます。ヨーロッパでもフィンテックが成熟し始めており、これらは非常に重要なトレンドだと思います。我々は欧州がこれからのイノベーションにおいて重要で、投資を行っていくべき地域だと考えています。

質問者:フィンテックが「金融を分解する」という意見が出ていますが、どのように考えていますか?

Jonathan氏:世界を見ると、少なくとも7,500のフィンテック企業が存在しています。また、デジタル・ヘルス業界の現状にも注目すると、この分野にも同数の企業があります。金融を分解すれば、実際にかなり優れた企業を見つけることができるでしょう。これはバリュー・チェーンのすべての顧客層と構成要素を考慮した結果です。
しかし、これらの企業の多くはまだ規模を拡大していません。業界は依然として金融機関とベンダーの両方の大規模な固定観念によって支配されています。これからの課題は、このような企業がどうやって、どれだけスピード感を持って変化していくということでしょう。

質問者:Peter Ma氏がAlibabaとTencent、他の多くの企業が本質的に新しいデジタル経済を作り出したことを注視していたと述べています。そこからどのような新しいパラダイムが生まれるのでしょうか?

Jonathan氏:われわれは、インターネット経済が過去15年間に変革をもたらしたことを確信しています。このことが証明された技術革新が数多くあります。

1つ目は固定観念にとらわれない市場の再定義です。Travis Kalanick氏が「Uber」を創立したときのことを考えてみましょう。彼はどの企業と競っていたでしょうか?サンフランシスコのイエローキャブですか?そうではありません。彼はどの企業とも争わずに、世界中の誰もが利用できる交通手段を創り出しました。「Airbnb」も同じような考え方です。

2つ目はデータを価値に変えることです。「Google」と「Facebook」がモデルケースでしょう。これらを合わせると、世界のデータ資産の66%を占めることになり非常に優れた例となっています。

3つ目はユーザー体験の再定義です。体験を完全に変えるということは、「Netflix」と「Spotify」を利用するだけで理解できます。

4つ目は革命的な自動化を促進することです。「Amazon」の倉庫のITインフラを考えてみてください。「トヨタ」はおそらく製造、イノベーション、自動化の分野で突出した例です。

最後の1つは、テクノロジーを活用して幅広いエコシステムにアクセスする能力です。「Salesforce」や「Android」が良い例です。これらの新しいテクノロジー技術はすべて金融業界以外から出てきています。


質問者:このことは中国平安保険の戦略にどのように影響されていますか?

Jonathan氏:中国平安保険ではすべてをエコシステムの観点から考えています。財務収益、不動産収益、自動車収益、医療保険についても同様です。また、現在まったく参入していない分野についても検討しています。たとえば、エンターテイメントや、行政サービスなどです。事実、サービス経済の大部分は新しい分野が参入しやすいと考えています。

質問者:例を挙げていただけますか?

Jonathan氏:中国平安保険は中国最大の自動車取引サイトを所有しています。2年前にNASDAQ上場企業である「AutoHome」の株式を54%取得しました。それ以来、同社の市場価値は4倍になり、現在の評価額は80億ドルにも上がりました。これは世界最大の自動車市場である中国で、全自動車販売の30%を占めています。
買収後、最初に取り組んだのは、AutoHomeの提供サービスの中に金融関連のサービスを追加することです。自動車販売において、最も分かりやすい金融関連サービスは、自動車のローンと保険です。我々はローンと保険を非常に大規模にスケールさせる方法を見出しました。次に関連するデータレイヤーを作成して、OEM企業向けの調査データ提供でマネタイズできるようにしました。また、データの活用によって消費者に価値が提供できます。

Roger Peverelli氏とReggy de Feniks氏によるインタビューと執筆


原文は以下のリンクよりご覧になれます
http://www.digitalinsuranceagenda.com/330/the-vision-behind-ping-ans-success-story