第一生命と日立の協創で、生命保険事業にイノベーションを

第一生命保険株式会社(以下、第一生命)と株式会社日立製作所(以下、日立)が「InsTech」によるイノベーション創出をスタートさせた。201839日、事例を日立の公式サイトで発表している。

 

その第1弾が約1,000万人の医療ビッグデータの分析による「生活習慣病に起因する将来の入院可能性とその日数を予測する定量評価モデル」の開発である。これにより、従来なら健康状態を理由に加入できなかった保険や特約の引き受け基準が見直され、加入範囲を拡大できる。今後も顧客要望にきめ細かく応える商品開発やサービスの拡充が期待される。

 

日立は、201512月には、社内の各部門から約30名の精鋭を集めた「InsTechイノベーションチーム」を発足している。「ヘルスケア」「アンダーライティング(保険の引き受け・査定)」「マーケティング」の3つのビジネス領域で、ビッグデータやAIなどデジタル技術を活用して生命保険業界独自のイノベーションを創出する取り組みを行っている。

 

これまで保険会社は、被保険者が加入時に提出する健康診断データや、告知情報、給付実績などをもとに保険の引き受けリスクを判断してきた。しかし、医療ビッグデータの分析環境が整備されてきたことで、さまざまな分析軸から、どのような経過で病気になり、どう悪化(あるいは改善)していったのかという経過予測を迅速に得ることが可能となってきた。

 

両社が約1年の歳月をかけて生み出した最初の成果が「生活習慣病に起因する入院の可能性とその日数」を予測する定量評価モデルである。これは、第一生命が蓄積してきた加入者約1,000万人の医療ビッグデータと、保険の引き受けに関する医学的知見やノウハウに、日立が保有する医療費予測技術()で培った分析ノウハウを組み合わせたもので、高血圧性疾患、急性膵炎およびその他膵疾患、糖尿病、肝疾患、腎疾患、心血管疾患、脳血管疾患、悪性新生物の8つの生活習慣病が対象となる。

 

従来、これらの持病や既往症があると、保険や特約が引き受けられないことが多かった。しかし、同じ病名が付いたとしても全員が同じリスクを持つわけではない。引き受け可能かどうかの詳細な判断が、今回の定量評価モデルで可能となった。

 

本モデルの活用により、20177月から、これまで保険への加入が難しかった高血圧治療中の顧客の一部を引き受けできるように査定基準が見直され、新基準適用後の約1カ月間で、300名を超える顧客が新たに加入できたという。

 

第一生命と日立は20179月から共同研究の第2弾もスタートさせている。この研究では、加入者一人ひとりの健康状態の推移や生活習慣の変化に着目している。保険加入時の定点における健康状態の評価のみではなく経年の健康状態を評価することで、より適切な引き受け範囲の見直しや、疾病予防・重症化予防、健康づくりの強化などに向けたサービス開発をめざしていくことになる。

 

※日立が日立健康保険組合と共同開発した、生活習慣病の発症率と医療費総額を予測する技術。本技術の開発にあたっては、レセプト(診療報酬明細書)や特定健康診査のデータを、個人を特定できないよう匿名化した上で活用している。