【DIA WHITEPAPER 2】3.コロナ再流行。今までにない不確定性が長く続く

コントロールできるという感覚は、遠くかけ離れている

ここ数十年の間に、技術の進歩によって私たちの生活はますますコントロールできるようになりました。例えば、行き先を示してくれるナビゲーションシステムや、指先ですべての情報を提供してくれる検索エンジンなど、今では生活に無くてはならないものになっています。例えば、宇宙関連を経営としたスペースX社の共同設立者およびCEOであるイーロン・マスクは、火星の植民地化に向けた準備を着実に進めています。技術の進歩によって私たちの生活は、これからも更なる変化を遂げるでしょう。その一方で、技術が進歩してもコントロールできないことも数多くあります。2020年6月だけでも地球上では数々の災害が発生しました。オーストラリアの大規模な山火事、アフリカ、パキスタン、インドのバッタの疫病、そしてコロナウイルス。これらの災害を通じて私たちは、私たちが思っているよりもずっと世界は壊れやすいという事実に直面しました。かつて信じていたほど確実なものはありません。様々な物事をコントロールできるという感覚は、私たちが思っているよりもずっと遠くかけ離れているように思えます。

健康についての継続的な懸念

人々はウイルスや自分の健康についてとても気にしています。「そもそもコロナウイルスとは一体どんなものか?」「私が感染したらどうなるのか?」「もしそうだとしたら、どうすればいいのだろうか?」「両親がウイルスに感染しないようにするにはどうしたらいいのだろうか?」「ワクチンはいつできるのか?」など、情報への飢餓感は計り知れないものがあります。インターネットの発達のおかげで、多くの情報を入手することができる一方、残念ながらその情報の全てが正しいとは言い切れないため、私たちに常に「正しい情報」を見極める必要があります。

デマに左右されない、冷静で正しい判断を

パンデミックと並行して、インフォデミックも起こっています。インターネットが発達した反面で、コロナに関する誤った情報やデマ、フェイクニュースが横行しています。記憶に新しいインフォデミックの例では、トイレットペーパーやティッシュペーパーの買い占めです。実際には日本の工場で生産されているものの、「中国の工場が封鎖され生産できず買えなくなる」というデマ情報が発端となり買い占めが起こり、物流が不安定になり、数ヶ月に渡って品薄状態になりました。これらのデマやフェイクニュース、インフォデミックは私たちが冷静かつ正しい判断をすれば回避できることが多いです。しかし、twitterやFacebookでの「善意」による正しく無い情報の発信と拡散、そして消毒薬の注射が役立つかもしれないと示唆する世界のリーダーの姿も見られます。世界保健機関(WHO)によると、インフォデミックはパンデミックそのものと同じくらい危険だといいます。 インフォデミックが広がってしまった後では、専門家からのアドバイスや科学的に証明された解決策によって収拾つけることが難しいとされています。なので常に私たちは左右されずに冷静かつ正しい判断を行う必要があります。

  • MyHealthDiary(インドネシア)は、信頼できる医療情報のみを提供することを目的としたアプリです。 アプリでは、なぜソーシャルディスタンスが重要なのか、症状の見分け方、検査キットが効果的かどうか、などのコロナウイルスに関する信頼できる医療情報を提供することで、正しい知識を身に付けることに寄与しています。
  • 他にも、誤情報問題に取り組むためにすぐにソリューションを作成したテック企業として、MediktorWellmoSDAInfermedicaなどがあります。

 

より脆弱な経済

コロナウイルスは健康への不安だけではなく、零細および中小企業や経済に対しても痛烈な打撃を与えています。通販などのeコマースを導入していないために、遠く離れた国の顧客に対して有効的な販売ができずに売上が低迷しました零細および中小企業も少なくないでしょう。コロナウイルスによってこのわずか数ヶ月で企業の状況や見通しが大きく変わってきました。2020年の年間計画はすでに崩壊している企業も多いでしょう。売上を伸ばすことが難しい企業は経費削減に力を入れています。

暗い経済の先行き

需給の急落は経済の先行きにも暗い影を落としています。経済の供給側になると、すでに最悪の事態を経験しているということになりかねません。より多くの工場では人々が再び仕事に戻り始め、パンデミック前の状態に戻りつつあります。しかし経済の需要側ではどうでしょう。パンデミックの経済的な惨状が痛烈なまでに明白になっています。2月には3.5%にとどまっていた米国の失業率は、4月には14.7%まで上昇しました。このわずか2ヶ月で、100年前の世界恐慌以来の最高失業率になってしまったのです。

消費活動の低下

一般的に、深刻な経済ショックと失業によって、人々は経済の不確実性を危惧して、買い控えをするようになります。そして信頼できる通貨である現金を少しでも手元に置いておきたいと思うようになります。個人金融会社Bankrateの調査によると、52%のアメリカ人はパンデミック当初より支出を控え、54%の消費者は、さらに今後3ヶ月間に住宅、車、休日の旅行、高級品などの大口商品の購入を検討しなくなったという調査結果があります。失業を防ぐために、多くの国が雇用維持を目的とした制度を導入しています。これにより、経済や消費活動の向上にもつながるかもしれません。

不明な出口経路

これからの時期は正念場と言えるでしょう。ロックダウンからの国をまたいでの様々な出口経路が重要になってきます。すべてのものをロックしてから再び開放することは容易ではなく、事実上すべてのサプライチェーンにまたがって調整の課題を生み出します。経済はいつになったら再び立ち直るのでしょうか?消費者や企業の支出は増えるのでしょうか?危機前と同じようになるのでしょうか?私たちは、消費者が新しい生活様式や健康法にどの程度対応するのか、不確実性があるかどうかを事前に知る術はまだありません。秋には感染症の新たなピークが来ると予想できるでしょうか?不況の結果はどうなるのでしょうか?では、その時はどうなるのでしょうか?すでに経験している今日よりもさらに厳しいものになるのでしょうか?残念ながらこれらを知る術はまだ無いのです。

より多くのストレスと精神的・肉体的健康の低下

景気の後退は、経済へのダメージだけではなく健康にもさらに影響を与えます。失業や、住宅資産などを失ったりするような事態は、経済的負担だけではなく、より多くのストレスや精神的および身体的健康の負担をもたらします。瞑想アプリ「Headspace」では、3月の最終週には、心を落ち着かせる運動を行ったユーザーが19倍に跳ね上がり、「不安のリフレーミング」セッションを行ったユーザーが14倍に増加しているとあります。コロナウイルスによって経済や、身体的な不健康だけでなく、精神的負担もさらに増幅されている結果と言えるでしょう。

徹底した不断の努力 – サイズを調整するための機会

1. これまで以上に重要となる安全性と信頼性

消費者は以前に比べてリスクに対する欲求は低下するでしょう。その結果、消費者の保護に対する関心は以前よりも高まっていると思われます。保険会社は、お客さまに対して「守ってくれる」「安心できる」という安全性と信頼性という価値の提供がこれまで以上に重要になってきます。

2.シンプルで、透明性があり、手頃な価格の提案

景気の悪化とその結果として人々が抱く倹約したいという思いが、シンプルで透明性があり、コスト効率の高い保険ソリューションと価格提案の需要を高めています。
すでに述べたように、PAYD、使用量ベースのオンデマンド自動車保険が主流になる可能性があります。補償内容が商品やサービスの購入の一部となっている埋め込み型保険のコンセプトについても、同様のことが期待されています。BsuranceMoonshot-InternetQoverServify、およびZhongAnは、すでにこの概念を利用している企業の例です。

EU の決済サービス指令である PSD2(EU Payment Services Directive II、PSD2)は、第三者の多様な事業者が提供するサービスと金融機関のシステムとをオープンAPIを介してつなぎ、支払いや資金移動といったさまざまな処理を柔軟かつ即座に行えるようにすることで、銀行の顧客に新たなオプトインサービスを提供する新しいモデルを創出しました。保険会社にとってはあまり注目されていませんが、PSD2はバンカシュアランスモデルを刷新する可能性を秘めていると考えています。銀行とのパートナーシップによる単なる販売や、マーケティングや引受プロセスでの銀行データの利用から、顧客との距離を縮めていくことができるようになります。適切なPSD2アプリケーションは、特定の支払いに連動した保険を提供し、保険をより個人的なものにし、よりリアルタイムなものにします。

3. お客様の力を高める

多く人々は、人生のすべての分野で正しい判断をしたいと思っています。このことはこれまで以上に重要なことです。特に、信頼できない情報源が増えてきたときには、情報に左右されず常に正しい情報を見極めるということが重要です。保険会社は、膨大なデータから実用的な情報を提供し、顧客にフィードバックを与えることで、消費者の生活を向上させることができます。例えば、損害のコスト、健康リスクの増加、または将来におけるリスクを回避するための提案などです。保険会社は、利用可能なすべてのデータを利用して顧客に「大きな力」を与えることを目指すべきです。例えば、外国語が話せなくてもやりとりができる音声合成言語翻訳機や、実際の道順を知らなくても目的地に辿り着くことができるGPSカーナビゲーターをイメージしてください。保険会社が顧客に似たような大きな力を与えることができるかどうかは、おそらく来期には分かるでしょう。

4. リスク管理能力の活用

お客様が不確実性に対処できるように支援することは、どの保険会社にとっても中核的な業務です。これらの能力を活用して、お客様に新たな付加価値を提供する機会は十分にあると考えています。保険を提供するだけではなく、商業および小売業も対象としています。現在の困難な時代は、保険会社にとって、顧客とじっくりと向き合い、その専門性を活かして顧客を積極的に支援する絶好の機会と言えるでしょう。