【DIA WHITEPAPER 2】4.繋がりと助け合い

グローバル化の光と影

グローバル化は、良い部分もたくさんありますが、全ての人にとって必ずしも良いことであるとは限りません。ごく一部の人を除いて、ほとんどの人が一年を通して非常にローカルなコミュニティに身を置いています。グローバル化によって良い部分がある一方で、新型コロナウイルスが世界各国に蔓延したスピードと、サプライチェーンがいかに速く止まったかについては、グローバル化によってもたらされた影の部分でもあると言えるのではないでしょうか。

それぞれの国独自の戦略

国民はパンデミックから守るために自国の政府の方針などの情報に目を向けており、ほとんどの政府は対策などをしっかりと行っていました。これほどまでに短期間で素早く思い切った決断を下す政府は今まで無かったでしょう。主要国の指導者たちは、時には強い言葉を使いながらも決断力を発揮しなければなりませんでした。ウイルスと戦うために、各国には独自の戦略があります。
国によって大きな違いがあることは当然のことです。しかし、すぐに各国同士の非難合戦が始まり、各国とも自分たちのことしか考えておらず、呼吸器やマスクなどの医療品を巡って醜い争いが起こりました。残念ながら国際的な連携やその後の連帯はあまり見られませんでした。この間、グローバル化の恩恵は闇に隠されてきました。

グローバル化からの後退と「自立」の模索

イギリスの欧州連合離脱問題や、ホワイトハウスの貿易戦争問題などに挙げられるように、グローバル化からの後退はすでに始まっています。これから先、各国や企業は、現在および将来の経済的脆弱性を減らすための解決策を模索し続けることになるでしょう。いま、「自立」という言葉が注目されつつあります。日本はサプライチェーンを再び国内に戻し経済的自立を促すために企業に補助金を出しています。また、インドの首相は「経済的自立の新時代が始まった」と明言しました。自身の運命をコントロールし、戦略的自律性を模索する必要があります。地元の企業を支援し、地域経済を再建するために、自分の国や地域、近隣地域の製品を購入することを動きが広がっています。「#supportyourlocal」は、トレンドのハッシュタグに成長しました。

見直される家族の価値

グローバル化からの後退は、各国が内向的になり、やがて世界の縮小を伴います。これは個人レベルでも同じことが言えます。私たちが外出自粛を余儀なくされた期間中、人々は伝統的なライフスキルや娯楽を再発見しました。 パンを焼いたり、ボードゲームをしたり、または愛する家族や恋人らと多くの時間を過ごすなどしました。自己の孤独は、私たちに家族の時間を見直すことを余儀なくさせています。いま、家族の価値が再び高まっています。家族がセーフティネットとして機能するからだけではありません。困難に陥った時には、周りの人たちとのつながりが私たちの心の拠り所になるからです。

俳優のデニス・ヘイズバート(世界的ヒットのテレビドラマ「24-TWENTY FOUR-」で初のアフリカ系アメリカ人大統領役を演じた)が、2009年の金融危機の時に放映されたオールステート社のCMを思い起こさせてくれました。「恐怖が収まった後、面白いことが起こる…人々は人生の小さなことを楽しみ始める…家庭料理の食事…愛する人との時間…私たちが持っているものに感謝する…私たちが頼りにできるもの…」

これまで以上の団結と連帯感

コロナ禍はネガティブな影響だけではなく、ポジティブな影響ももたらしてくれました。誰しもがこの困難を乗り越えるために一丸となって戦っているのです。世界最大のローカルビジネスの口コミサイトである「Yelp」によると、献血への関心は204%上昇しているとあります。お気に入りの地元のレストランを助ける目的でその店の商品券を購入する人も増えています。他にも、地域を活気づける目的で、イギリスでは小さな子供たちが「bear hunting(クマ狩りごっこ。イギリスの有名な絵本をモチーフにした遊び)」に行けるように、おもちゃの動物が窓の前に置かれたり、医療従事者やボランティアに拍手を送ったり、イタリア人がベランダから歌を歌うなどの取り組みも自発的に起こりました。ビール醸造家は、アルコール消毒剤を製造するためにストックをリサイクルしています。 99歳のトム・ムーア大尉(イギリス)は4月初め、新型コロナウイルス対策の最前線ではたらく人たちを支援するため、1,000ポンドを募るキャンペーンを開始し、4月30日の100歳の誕生日までに自宅の庭を100往復すると宣言しました。歩行補助器を使いながら庭を往復するその姿が注目され、これまでに3,000万ポンド(約40億円)以上が集まっています。コロナ禍における心温まる事例は信じられないほど数多く存在し、それは保険や保険技術の分野でも同様の事態となっています。コロナ禍を乗り越えるために、これまでに前例のない人々の団結と連帯感が注目されています。

すべてのものに共感を – この先を生き残るためのヒント

1. 困難な時期こそ、解決するためのサポートを提供する機会である

人々は困難に直面すると、相談ができる窓口や施設を切望しています。消費者は、金融サービス事業者が困難に直面している顧客をサポートすることを求めています。人々が困難に直面する事態こそ、解決するためのサポートの提供が求められます。3月、ABNアムロ銀行のCEOであるキキーズ・ファン・ダイクハイゼン(オランダ)は次のように述べています:「2008年のリーマンショックの際には、銀行は問題の一部となっていましたが、今回のコロナ禍においては、私たちは解決策の一部となっています。」 これは銀行だけの話ではなく、保険会社においても同じことが言えるのではないでしょうか。保険会社として、解決策の一部でありたいですか?それともより多くの問題を引き起こすことで知られるようになりたいですか?

  • 新型コロナウイルス感染症対策としてのシェルター・イン・プレイス(屋内退避)命令を受けて、米国の自動車保険会社は、保険契約者のリスク軽減を補償するために保険料の割引を発表しました。例えば、ステートファーム保険は、5 月 31 日までの全契約者を対象に 25%の割引を発表しましたが、これにより約 20 億ドルの保険料収入減となりました。
  • イギリスの保険会社Beazleyは、コロナウイルスの影響を受けた保険契約者をサポートするために、60日間の保険料の一時停止を実施しました。
  • イギリスの数百以上の企業は、政府がコロナによって閉鎖されるとなった場合でも、自分たちは補償されていると思っていました。彼らの事業休止保険は、告知可能な病気のために事業を閉鎖せざるを得なくなった場合に保険会社が支払いをするとありました。しかし、これらの企業の経営者が異議申し立てをしたとき保険会社は「パンデミックに対応するために政府によって取られた一般的な措置であるため、事業休止保険の補償範囲対象外である」と述べました。これらの企業の一部は倒産する可能性が高いです。

2. 感情は差別化のための柱である

共感などの感情的な部分が消費者にとって今後ますます重要になってくるでしょう。積極的に顧客に手を差し伸べ、顧客の利益のために行動し、顧客が望むような方法で接することで、大きな差別化を図ることにつながります。目的はお客様にとってのあなたの有用性を高めることです。激動の時代には、あなたが気にかけている姿勢を示すことで、親近感や共感してくれると感じたり、より記憶に残ります。また、顧客がファンやインフルエンサーになってくれる可能性が高くなります。さらに、保険会社の従業員も経営者も、思いやりのある会社で働く方が魅力的だと感じるようになります。

人工知能(AI)を活用したプラットフォーム等を展開するテックプロバイダーの例としては、AdviceRobo(信用スコアリングソリューションを展開)、Force Manager(営業向けCRMを展開)、Glia(AI管理プラットフォームを展開)、Helpshift(デジタルカスタマーサービスプラットフォームを展開)などが挙げられます。このようにAIを活用したプラットフォームは、会話の改善、顧客満足度の向上、コンバージョン率の向上にもつながります。

3. 会社の「外」の人材の活用

いま保険会社は、これまで以上に顧客との関係性を築くために感情、共感、情熱、創造性を注入し、必要に応じて従来のプロセスや提供サービスなどを変えていくことが求められます。そのためには保険会社で働く従業員の何千人、時には何万人もの従業員の力だけではなく、会社の「外」の保険ブローカー(保険中立人)やエージェントの活用を行うことも重要になってきます。高度な技術を使って彼らに力を与え、彼らをより効果的かつ効率的にしていくことが課題となります。会社の「中」の従業員、会社の「外」の保険ブローカーやエージェントの両者の世界のベストを創造することが求められます。

再構築 コロナ禍からの解放

4つのトレンドが舞台を飾る

コロナウイルスは「ソーシャルディスタンス」を超えて人々の生活に大きな影響を与えています。それはまるでマズローの欲求5段階説におけるピラミッドがひっくり返っているようでもあります。4つのトレンドにおいて紹介しましたが、いま最優先事項なのは「より健康を第一に」置くことです。「新たな生活様式とのつながり」は、これまでより高いギアにシフトしています。人々が健康状態や不況、雇用の安定性について経験する「今までになく長く続く不確定性」は、すぐに変わることはないでしょう。また、コロナ禍によってあらゆるものに「思いやり」を持つことの重要性と人間的な側面を浮き彫りにしています。その結果、消費者や企業は、これらの新しい状況に合った新世代の製品やサービスを求めています。

そのため、保険会社のリーダーには短期的な課題だけでなく、事業を維持していくことが求められています。同時に、新たな市場環境の中で会社が関連性を持ち続けることを確認しなければなりません。デジタルトランスフォーメーションを早急に進め、プロセス、製品、サービスだけでなく、流通や運営モデルも再考する必要があります。さらに、新しいビジネスや収益モデルを考え、最新のテクノロジーや保険技術のパートナーシップを活用し、新たなチャンスをつかむことです。4つのトレンドが舞台を飾ります。

「良い危機」は決して無駄にしない

危機は、憂鬱や破滅をもたらすばかりではありません。新たな創造のための絶好の繁殖地としても機能します。新たな創造はもはやオプションではなく、緊急かつ重要なものとなっています。すべてがうまくいっているときと同じ手段を使ったとしても、この危機に立ち向かうことは不可能です。新しい条件や制約は、私たちに新しい方法を考えさせます。さらに、業界や企業を横断してみると、経営者や従業員は、根本的な解決策に対してよりオープンであり、その実現に向けてより効率的であることがわかります。チャンスをつかむ方法を知っていれば、この先には素晴らしい時代が待っていることでしょう。