アクセンチュア最新調査―保険会社はビジネスやオペレーティングモデルの変革により3,750億ドルの増収が可能と試算

アクセンチュアの最新調査によると、保険会社はビジネスモデルの見直し、事業の変革と活性化に前向きに取り組むことにより、今後5年間で3,750億ドルの増収が世界全体で見込めると試算した。2018212日(現地時間)、ニューヨークより発表している。

 

アクセンチュアが世界の保険会社を対象に実施した最新調査「Insurance as a Living Business(活気あるビジネスとしての保険)」によると、継続的にイノベーションを起こし、顧客のニーズの変化に適応し続ける保険会社は、新たな成長機会を捉え、競合他社を上回る業績をあげることが可能であると述べている。

 

保険会社にとっての、5つの重要分野

こうした変革に積極的に取り組む保険会社は、(1)これまで利益を得るのが困難だった分野への進出、(2)サイバー・セキュリティや自動運転車などの新興リスクへの対応、(3)細かくパーソナライズされた商品・サービスの開発に向けた、保険業界内外での事業提携の拡大、(4)データ、プラットフォーム、アルゴリズムといった無形資産の収益化、(5)顧客が負うリスクの軽減に役立つ付加価値サービス(被害が生じる前に保守の問題を検知するコネクテッドホーム家電(※1)など)の重要分野で、新たに1,770億ドルの収益を得ることができると予想している。

 

さらに、その変革への取り組みをより一層加速できる保険会社は、この5つの重要分野における業界内外の企業から市場シェアを獲得することにより、追加で1,980億ドルの収益を得ることができると予想している。

 

保険会社が継続的に変革に挑み、さらにきめ細やかな顧客ニーズに対応していくためには、雇用環境の流動化や既存のインフラの合理化を図り、データとアナリティクスをさらなる活用が必要である。また、新しいアイデアとアプローチを積極的に受け入れる力強いリーダーシップと企業文化の構築も重要になる。

 

成長機会を生かすために保険会社が取るべき施策

よりパーソナライズされたサービスを迅速に市場投入するために、新しいモデルと最新技術(人工知能(AI)、ブロックチェーン、スマート・コントラクト、IoTなど)を取り入れた、全社規模のデジタル戦略の策定や、商品・サービスを適切にカスタマイズするために、保険会社が保有する顧客データの活用といった施策が含まれている。

 

さらに、保険会社(損害保険、生命保険、企業保険)による、新たな商品・サービスの提供、ならびに既存の商品・サービスのリーチ拡大により、増収をもたらす5つの分野について示している

 

1. 参入が困難な市場にターゲットを絞り、新しい効果的な方法で進出を目指す

保険会社は、新しいチャネル(オンラインやモバイル)やテクノロジー(アナリティクスやジオロケーション(※2))の普及に伴い、これまで困難だったマイクロ保険や生命保険の即時発行といった分野に進出し、コスト効率よく、市場シェアの拡大が可能になっている。これにより、1,440億ドルの新たな収益が見込める。

 

  1. 新興リスクから生まれる商機

保険会社は、サイバー攻撃や自動運転車の登場に起因するリスクなど、新興リスクに対応する新たな保険商品・サービスを開発する必要がある。これにより、1,110億ドルの新たな収益が見込める。

 

  1. 新しい仲介機能とエコシステム

保険会社は、インシュアテック分野のスタートアップ企業や保険業界以外の企業と協力し、これまでとは異なる方法で顧客と関わることで、新たな顧客価値の源泉を見い出すことが可能となる。例えば、GoogleAmazonFacebookAppleといったオンライン・プラットフォーム企業による既存のエコシステムへの参加を通じて、それらのプラットフォーム上でバーチャル・アシスタントなどを利用する消費者とつながることができる。このアプローチにより、800億ドルの新たな収益が見込める。本調査では、損害保険分野で新たに見込める収益の76%が、このような新しい協力関係によってもたらされると述べている。

 

  1. データ・プラットフォームとサービスモデルの収益化

保険会社は、自社の無形資産であるデータ、カスタマー・インサイト(※3)、サービスとしてのプラットフォームやサービスモデル、リスク評価アルゴリズムなどをエコシステム内のパートナー企業に提供することにより、280億ドルの新たな収益が見込める。

 

  1. 付加価値サービス

保険会社は、ウェアラブル端末を使い、高齢者が在宅生活を長く続けられるようサポートするといった、顧客のリスク軽減に役立つパーソナライズド・サービスの提供や、コネクテッドホーム家電の販売や管理に重点を置く必要がある。これにより、120億ドルの新たな収益が見込める。

 

※1 コネクテッドホーム:ホームオートメーションにモノのインターネット(IoT)を取り入れた発展形。家の中の機器がインターネットと無線通信で接続され、スマートフォンやタブレットなどの端末によって外出先からでも遠隔操作が可能なものを指す。

 

※2 ジオロケーション:ユーザーの位置情報を扱う技術。地球・地上の意味である「Geo」と位置・場所を意味する「Location」を合わせた言葉。

 

※3 カスタマー・インサイト:消費者インサイト。消費者の購買行動の奥底にある本音のこと。購買意欲を促す潜在的な欲求スイッチのようなもの。