前回は、「フィンテック」「インシュアテック(インステック)」の言葉の意味を中心に解説しました。今回は、「インシュアテックは生損保会社にどんな影響を与えているのか?」について説明したいと思います。
インシュアテックは生損保会社にどんな影響を与えているかというと、すでに多くの生損保会社の業務がインシュアテックの影響を受けています。インシュアテックと聞くとまるで新しいもののように感じられるかもしれませんが、突き詰めると業務のIT化のことなので、よく考えると古くから試行錯誤しながら、進められているのです。
では、生損保会社がインシュアテックを利用することによって、生損保会社にはどのような影響があるのでしょうか。実は多くのメリットがあります。保険会社は業務の効率化や間接費の抑制、魅力的な商品開発などにつながり、契約者には保険の選びやすさや手続きの簡単さ、保険料の値ごろ感などの恩恵を受けることができます。どちらにとってもインシュアテックの活用はメリットがあるといえそうです。
現在、どの業務でインシュアテック(IT技術)が使われているかというとわかりやすいところでは、保険商品を中心とした業務だと思います。保険の企画から履行までの段階を4つに分けると「(生損保会社)保険商品の企画」「(生損保会社・保険代理店)保険の販売」「(生損保会社・保険代理店)保険契約の事務」「(生損保会社)保険契約の履行」となり、どの分野でもインシュアテック技術が活用されています。
例えば、保険商品の企画では、ウェアラブル端末に代表されるIoTによるデータの取得やすでにあるビッグデータの解析などによって新しい保険商品の開発やリスクを加味した保険商品などが企画・商品化されています。この分野は、すでに海外では始まっていましたが、今年になり日本でも少しずつ増えてきました。今後、一層注目されるインシュアテック技術の活用分野といえるでしょう。
また、保険の販売では、生損保各社や保険を販売する代理店で営業を支援するシステムやアプリの開発がすすめられています。営業員だけでなく、一般の人が自主的にインターネットやアプリを使って、自分にピッタリな保険を見つけるということにもビッグデータやAIなどの技術が駆使されています。
最後に古くからIT技術が活用されている保険契約の事務は、最近では定型作業を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)技術を使って契約の事務効率を高める生損保会社が増えてきました。保険契約の事務は、定型作業のため、システム化しやすいという特徴があります。そういう意味ではインシュアテックと親和性の高い分野なのかもしれません。
生損保各社でインシュアテックの活用度合いは異なりますが、海外の流れをみると日本でも活用されていくのではないでしょうか。
保険業界記者 胡桃澤いずみ