朝日生命保険相互会社(以下、朝日生命)は、日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、IBM)が提供する「IBM SPSS Modeler」を導入し、顧客データを分析して、介護保険商品の成約見込み度を予測するモデルを開発したと発表した。開発の目的は、営業活動の効率化と成約率の向上である。本システムを使用し、保険商品に加入意向の高いお客様を抽出の上、提案した結果、通常のお客様に比べ成約率が向上したと確認している。
■朝日生命の開発課題
近年、インターネットを活用し、保険商品の知識を深めた消費者が、保険を見直す傾向がある。このような変化に対応すべく、生命保険会社は、営業活動の一層の効率化を進めており、営業職員の成約率向上を図るためのデータ活用の重要性が高まっている。
朝日生命では、ビッグデータの活用に、いち早く着目していた。2001年に社内データを蓄積するためのデータウェアハウス(DWH)を構築し、2012年に顧客に関する各種データを統合したCRMシステム(ACTION)を稼働させた。これにより、お客様と朝日生命のデータを一元管理することができ、さらにデータ解析することで、営業活動に役立てることができた。
■介護保険商品「あんしん介護」
2016年より進めているプロジェクトで介護保険商品の1つ、「あんしん介護」にIBM SPSS Modelerを分析ツールとして利用し、営業活動にデータ分析を活用している。このプロジェクトでは、分析スキルに長けている株式会社AIT(以下、AIT)が参加している。
本プロジェクトでは、ACTIONシステムから顧客データを抽出し、成約見込み度を予測する分析モデルを開発し、そこから見込み客リストを作成する。さらに見込み客リストから、加入意向の強いお客様にマークをつけ、重点的に営業を行った。しかし、ACTIONシステムにはデータの中には不完全なものが含まれており、分析前のデータ加工に時間がかかり、分析のために専用のプログラミングスキルが必要という課題があった。
今回、採用したIBM SPSS Modelerはデータ加工ツールを標準搭載しており、また、プログラミングの知識も必要なく、誰でもわかりやすいグラフィック・ユーザー・インターフェースで操作できるように設計されている。
■将来の展望
営業企画部 営業企画室長 神谷氏は「営業の経験として成約の見込み度が高いと思えないお客様にマークがついていたが、訪問すると実際に成約に結びついたケースがあった」と話す。このことから、予測モデルが営業職員の経験からはわからない、隠れた有望見込み客の発見に役立つことが証明された。今後、朝日生命は、介護保険以外の商品の営業施策にもデータ分析・活用を広げていく予定だ。