2023 InsurTech予測

InsurTechNewsが#50insurtech(注1)のインフルエンサーたちの意見を集め、2023年に何が待ち受けているのか、貴重な知見を得ました。InsurTechは今後もイノベーションを推進し、AIやIoTなどのテクノロジーをリスク軽減に活用しながら、顧客中心のアプローチにシフトしていくのか見極めていきましょう。

Mark Breading マーク・ブレッディング

ReSource Pro Company, Strategy Meets Action, パートナー

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Strategy Meets Action:https://strategymeetsaction.com/

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2023年のInsurTech市場は、経済状況に大きく影響を受けるでしょう。少なくとも最初の段階では、保険会社の予算がオペレーションの効率性と収益性に注力するため、実証実験、提携、資金調達の停滞が予想されます。これらの分野で実績のあるInsurTech企業は引き続き成功すると予想されますが、新規参入企業や一風変わったテクノロジーソリューションを提供するInsurTech企業は活動が鈍る可能性があります。
2023年の残りの期間は、アメリカと世界の経済がどこに向かうかによって大きく変わるでしょう。大規模な不況に陥れば、全ての予測が外れる可能性があります。経済と市場が回復すれば、活発なInsurTech市場が見られるかもしれません。

一方で、MGA(注2)の台頭という大きなトレンドは変わらないでしょう。InsurTech時代に多くのInsurTech MGAが登場し、多様なビジネスモデルが展開されました。これらのMGAは、イノベーション革新を促進し、損害保険分野での専門化に貢献してきました。2023年には、新しい独立系スタートアップMGAや、多様化を目指すキャリアによって立ち上げられたMGAの新しい波が現れることが予想されます。一方で、既存のInsurTech MGAは今後も成長を続けるでしょう。

Walter de Oude ウォルター・デ・オード

Chocolate Finance, Singapore Life創業者

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1. 保険会社は、保険商品に加えて銀行や資産管理サービスを提供することで、事業領域を拡大するでしょう。
2.D2Cの生命保険会社は大きな規模にはならないと見込んでいます。
3.保険商品比較サイトの10社のうち9社は新たな資金調達に失敗するでしょう。

Rob Galbraith ロブ・ガルブレイス

Forestview Insights 創設者・CEO

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1. InsurTechは耐えるか滅びるかの場面にいる
2022年は苦戦を強いられ、幻滅のどん底にあった。成熟したInsurTech企業は、収益性の明確な道筋を示さなければ、資金不足と持続可能な成長の欠如でゆっくりと消えていくことになる。年末までに勝者が明らかになり、長期的なビジネスに取り組んでいることを証明する。

2.テクノロジー導入に先駆けた代理店とブローカーが報酬を受け取る
初期は直販に注力することが多かったInsurTechスタートアップや投資は、過去数年間にわたり、代理店やブローカーをサポートすることに焦点を当てるようになってきた。特に小規模なマーケットには、手にしやすい機会がたくさんあり、アーリーアダプターは多くの利益が得られる。その結果、競合他社にFOMO(注3)を与え、採用の波が起こる。

3.2023年は、新しいスタートアップにとって素晴らしい年になる
ドットコムバブル後の2001年や、大不況後の2009年には、資金調達が厳しく、マクロ経済環境も悪化していたため、スタートアップの立ち上げ数が減少した。しかし、この時期に立ち上げられたスタートアップの多くが成功し、長期的なビジネスを続けている。今年設立されたスタートアップが、10年後には画期的と認められ、保険業界を根本的に変えることで世界的な注目を集めるでしょう。

Florian Graillot フロリアン・グライロット

astorya.vc 投資家

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InsurTech業界はまだ発展途上にあるものの、昨年のFinTech投資の約10%、欧州のスタートアップエコシステム全体の約2%を占めていると考えられます。テクノロジーやイノベーションにより生み出される機会はまだまだあります。

インフレに関連するプレッシャーや、新興企業が収益性を高めるための道筋を設計するよう監視されていることから、保険のバリューチェーンの引受部分を含むオペレーションの有効性に関する新しいスタートアップが出現すると予想しています。

イノベーションの面では、流通面だけでなく、保険業界の従来の企業とほぼ同レベルのスキルを提供できるInsurTechソリューションにより、他業界のプレイヤーが保険業界に参入し続けることを期待しています。

Spiros Margaris スピロス・マルガリス

MARGARIS VENTURESのベンチャーキャピタリスト
世界No.1のフィンテックインフルエンサーとソートリーダー

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InsurTechと保険業界の2023年以降の展望は、人工知能(AI)、モノのインターネット(IoT)、その他のテクノロジーを活用し、新たな機会を創出し続けるというものです。AIは、保険金請求処理や引受などの複雑な作業を自動化し、顧客のセグメンテーションごとのパーソナライゼーションを向上させるために利用されるでしょう。IoTは、リスク要因に関するリアルタイムのデータを提供し、より良い価格設定、リスク評価、保険金請求処理のためにデータを分析する手助けになります。

InsurTechは、効率的で費用対効果の高い、顧客中心のサービスを提供することで、保険業界のイノベーションと競争を促進し続けるでしょう。また、AIやIoTを活用し、顧客のニーズに合わせた革新的な商品やサービスを開発するようになるでしょう。これらのテクノロジーは、保険会社とインシュアテックがお客様により多くの価値を提供し、より競争力のある持続可能な保険市場を実現し、お客様の将来の需要やニーズに適応することにつながるでしょう。

Chris Cheatham クリス・チーサム

RiskGenius CEO兼創業者

InsurTechのトピックについて定期的に執筆や講演を行っている。趣味は自転車。

Chris Cheatham:https://www.linkedin.com/in/chrischeatham

InsurTechというワードは、今は幻滅の谷にあると言ってもいいと思います。業績不振のInsurTech企業の中には、IPOした企業(例えば、LemonadeやRoot)や、プライベートマーケットで買収された企業もあります。また、2023年に事業を継続するために必要な資金援助を受けるのに苦労するInsurTech企業もあるでしょう。

しかし、この谷間から抜け出したとき、以前は無視されていたInsurTech企業が成功・流行し、長続きすることになります。このようなInsurTech事業は、困難な経済状況下で鍛え上げられたものです。これらの勝者の多くは、特定の市場セグメントを狙い、顧客を喜ばせる「ニッチ」なプレーヤーになると思います。これらの成功したInsurTech企業は、Kinsale Insurance(注4)やPalomar Insurance(注5)のような企業の道をたどることになるでしょう。KinsaleとPalomarを、昨年の公開市場におけるLemonadeとRootと比較すると、将来の投資家が何を求めているかを示す良い例となるのではないでしょうか。

Denise Garth デニス・ガース

Majesco 最高戦略責任者

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2023年を迎えるにあたり、私たちはインフレ、サプライチェーン問題、金利上昇、低失業率などの市場経済を含む新しい課題に直面しています。私たちは、社会的、気候的、技術的なリスクとそれらが私たちの生活に及ぼす潜在的な影響について、何とか解決しようとしています。収益性の低下、損害率や保険金支払額の上昇、再保険キャパシティに対する需要の高まり、可処分所得の低下、保険業界における離職率の上昇が予測されることによる人材喪失の進行などを経験しています。そして、市場環境の変化も見られます。その結果、2023年には、保険業界に影響を与え、変化する市場の課題に対応しながら、ビジネスの基礎と基盤を強化することで対応することが保険会社に求められる、ゲームチェンジをもたらすシナリオがいくつか用意されています。

1. リスク:新しい、移り変わる、複雑化するリスク

リスクはますます私たちの関心を集めています。環境影響リスク、社会的リスク、テクノロジー/サイバーリスクは、従来の保険契約に基づくリスクに加え、3層のリスクとなっています。このような複雑なリスクは、損害保険会社・生命保険会社の商品内容、引受能力、より広範なデータやアナリティクスの活用、顧客との関係性を今後も変化させるでしょう。

2. デジタルアンダーライティング(注6)

アンダーライティングは保険ビジネスの中核をなすものです。リスク要因が急速に変化する中、アンダーライティングへの注目度はより高まるでしょう。 個々の契約リスクの評価からポートフォリオ全体の評価、リスクとリスクアペタイトの評価、そして最終的には収益性まで、アンダーライティングは次世代コア、デジタルアンダーライティングワークベンチ、AI・機械学習、デジタルロスコントロール、さまざまなデータソースを取り込む機能などを組み合わせてデジタル化を大きく進め、リアルタイムなリスクマネジメントとインサイトを生み出すと同時に、エージェント/ブローカーと顧客の体験を大幅に強化するでしょう。

3. プロダクトセントリックからカスタマーセントリックへのシフト

これからの時代は、顧客がすべてです。 伝統的な保険商品は、常にお客様の安心感を生み出す上で極めて重要ですが、新しく拡大するリスク、市場のダイナミクス、保険購入者の中でも特に若い世代のニーズや期待の進化に伴い、提供する商品、価格設定、引受、チャネル、サービス、人間味あふれる顧客体験に対する個別化・人格化を加速させる新しいアイデアやアプローチが求められています。

4. リスクマネジメントとリスクレジリエンス

保険会社にとって「コントロールできるものはコントロールする」という古くからある格言は、今や最重要課題となっています。新しいリスク管理戦略は、引受および顧客サービス戦略の重要な要素として、リスクをより適切に評価し、損失を防止して収益性と顧客体験を向上させる方法に焦点を当てています。 レジリエンスは、変化と不確実性に満ちた世界で生きる上で不可欠であり、リスクを回避または最小化する能力に焦点を当て、回復力を高め、悪い影響を減少させます。顧客がこれを受け入れるだけでなく、保険会社は顧客のロイヤリティと信頼を高めるための価値提供により新たな収益源を作り出すことでしょう。

5. チャネル・マルチチャネル 顧客に合わせた対応

顧客を惹きつけ、維持するための競争が激化する中、保険会社は、顧客が望むときに望む方法で顧客を惹きつける、より広範な流通エコシステムを開発・活用しなければなりません。 ものごとが有機的に繋がっている今日の世界では、保険会社は幅広い流通チャネルの選択肢の中で活躍し、顧客が保険を購入したいときに、どこでも、誰でも、リーチを広げることが求められます。 これらのオプションは、リーチを拡大する流通エコシステムを形成しますが、特にこのパラダイムを完全に変える組み込みチャネルについては、パートナーシップによるアプローチが必要です。

6. テクノロジーへの投資が加速する

テクノロジーは、戦略や市場の変化に適応し、イノベーションを起こし、スピード感を持ってサービスを提供するための基盤を提供します。プラットフォーム技術、API、マイクロサービス、デジタル機能、非従来型のデータソース、高度な分析機能の重要性の高まりと採用は、今や成長、収益性、顧客エンゲージメント、チャネル到達、労働力の変化にとって極めて重要です。マクロ経済の逆風やその他の市場課題を考慮しても、保険のあらゆる側面が未来という文脈で再定義されつつあり、次世代テクノロジーはその未来のための基盤となっています。最近の歴史は、後退することが大きな間違いであることを証明しています。先進的な企業は、後退するのではなく、投資を加速させるでしょう。そして、次の大きな混乱に備え、競合他社から一歩前に出るのです。

※本記事は、https://insurtechnews.com/insights/2023-insurtech-predictions を翻訳したものです。

(注1)InsurTechNewsが月次で独自に公表しているInsurTech領域のトップ50のインフルエンサーのこと。
https://insurtechnews.com/influencers

(注2)Managing General Agentの意。米国では保険会社に代わり、契約管理・マーケティング・契約引受条件の提示・再保険手配・支払保険金の確定などの役割を担う販売チャネルである。主に一般の損害保険ではカバーされないような特殊なリスク(例:医療過誤賠償責任保険・会社役員賠償責任保険など)を対象とし、専門性の高いアンダーライティング力を必要とする保険を取り扱う。

(注3)「Fear of Missing Out」の略語で「自分が居ない間に他人が有益な体験をしているかもしれない」という不安に襲われることを指す言葉のこと。

(注4)Kinsale Insurance:https://www.kinsaleins.com/

(注5)Palomar Insurance:https://plmr.com/

(注6)アンダーライティングとは契約申し込みのあったとき、保険会社が危険度や金額などを勘案し、その契約を引き受けるかどうかを判断する一連の業務のこと