【DIA WHITE PAPER】コロナが保険のデジタルトランスフォーメーションに与える影響

Digital Insurance Agendaより【DIA WHITE PAPER】を8回にわたりお届けします。

イントロダクション

世界中で起きている新型コロナウイルスのパンデミックが、保険業界にも前例のない影響を与えていることは間違いありません。共通していることとしては、コストの削減、投資の延期、デジタルトランスフォーメーションプログラムの保留です。しかし私たちは、今こそ正反対のことをしなければならないと信じています。幸いなことに、デジタルトランスフォーメーションを促進させ、この保険業界にテック企業を巻き込むことの重要性を認める保険会社が増えています。現在の危機は、どのタイプのインシュアテックソリューションがこれまで以上に関連性が高いかを明確にするでしょう。

「TWELVE MONKEYS」と「アンドロメダ・ストレイン」の出会い

ひどい映画

一晩でまるでひどい映画になってしまった気がします。映画「Twelve Monkeys」を観たことがありますか?50億人がウイルスに感染してブルース・ウィリスが他人と一緒に地下に住むという内容の映画です。「The Andromeda Strain」では、科学者のグループが致命的なウイルスの拡散を防ぐために全力を尽くすのです。本当にシュールです。まあ、少なくともこれらの映画がリリースされたときに…

人々の回復力

中国からのレポートは、感染が欧米で急速に拡大するまで抽象的なままでした。多くの人が外出自粛を余儀なくされたときや、経済が深刻な停滞に陥ったときですらそうでした。数週間から数ヶ月にわたって曖昧なままでした。この時期に明らかになったことは、人々がいかに適応力があるかということでした。数週間でリモート業務はかなり正常に機能するようになり、オンラインでワークアウトクラスを積極的に受講し、子供たちは自宅でリモート授業を受けるようになりました。私たちは「ソーシャルディスタンス」について婉曲的に語っていますが、これらはもちろん、わずか4か月前の2月の私たちの暮らしや働き方と比較すると、短期間での大きな進歩です。同時に、かつてない繋がりと一体感に気づきました。世界中の人々が、家のバルコニーから一緒に歌って、互いのために何かをするのです。通り全体で、家の前でビンゴをするなんて、もちろん、どれも驚くような事態です。

不安定な状態

制限は徐々に解除され、私たちの世界は再び少し大きくなって、そして経済も回復していきます。私たちはおそらく、ワクチンが入手可能になり誰もがワクチン接種を受けられるようになるまでは、以前と同じように互いに交流することはできないかもしれません。それまではおそらく依然として不安定なままです。健康だけでなく、経済状況、差し迫った世界的な不況も、決して明るい見通しではありませんが、多くの場合はこのような期間がイノベーションを繁栄させ、急速に発展します。これは保険についても同様です。

将来の保証

一方デジタルモデルは、これらの困難な状況でも機能し成功することが証明されています。危機から守られ、将来を保証されているとも言えるでしょう。リモートでの取引を可能にする高度なテクノロジーがリードしています。これらの違いがこれほど明確になったことはかつてありませんでした。

 

もう先延ばしにする時間はない。デジタルトランスフォーメーションはより急速にシフトする。

保険における差し当たっての新しい課題

事実上全世界で取り入れられているソーシャルディスタンスの結果として、人々は初めて、仕事から買い物まで文字通り全てのことを自宅から行うことを余儀なくされました。これは、誰もが直接経験した最も劇的な変化です。そして保険会社に新しい挑戦をもたらしました。

かなりの数の保険会社では、スタッフ全員が在宅勤務できる状況ではありませんでした。必要なデジタル機能が欠けていたのです。ラップトップの不足や、従業員がリモートで重要なビジネスアプリケーションに安全に接続することをオフサイトでサポートするVPN接続の設備が不足するなど、ささいな課題が発生しました。しかし、これらの課題がいかに早く解決されたかは注目に値します。ビデオ会議や画面共有といったコラボレーションツールの使用など、新しい柔軟なプロセスが数日でセットアップされることがよくありました。

政府が対面のミーティングに歯止めをかけると、すぐに売上はブローカーやエージェントからデジタルチャネルへの大幅にシフトしました。当然従来の保険会社、ブローカー、エージェントの売上は落ち込みました。顧客は自宅から保険を購入しなければなりませんが、ほとんどが対面のフローで設計されていたため、営業することができませんでした。デジタルを対象とするブローカーでさえ、ビジネスを行う保険会社がデジタル商品やプロセスを欠いていると、適切に機能することができません。

ザンクトガレン大学、BavariaDirekt、Versicherungskammer Bayernがドイツ、スイス、オーストリアの保険会社経営者140名を対象に行った調査によると、回答者の82%以上が、コロナが販売に多大な影響を及ぼしていると回答しました。対面で顧客に保険のアドバイスを行い、手書きの署名を必要とする従来の営業形態は、顧客がデジタルチャネルをどんどん受け入れている今、もはや追いつめられていると説明しています。

事態は回復するのか?希望的観測では…

原因は、異例の出来事(前例のない予期外の世界的影響を伴うパンデミック)であるため、埃が落ち着くように2020年2月の完全に正常だった状態に戻ることができると考えたくなるかもしれません。私たちは、変化は構造的かつ戦略的なものであると確信しています。これには2つの理由があります。そもそも今私たち全員が経験していることは、顧客の行動に長期的な影響を及ぼすということ。第二に、ロックダウン期間中が、従来の伝統的な営業形態とデジタルモデルの比較といった、保険における様々なビジネスモデルの厳密な吟味になったということです。

 

顧客の行動の変化は一時的なものではなく、ここにとどまるものもある

急速に進むデジタルへの切り替え

未だかつてないほどに、私たちは今あらゆることをオンラインで取り組んでいます。外出規制の中、中国ではオンラインで過ごす時間が20%増加し、ヨーロッパの一部の国では、ボーダフォンのインターネット利用が最大50%急増しました。米国では、パンデミック時のストリーミングも大幅に増加しました(26%)。オンラインでの食料品の買い物、デジタル決済、友人とのオンラインミーティングなど、私たちは皆、信じられないほど短期間で生活に適応させることを学びました。まさにコロナの影響で、デジタルへの切り替えは急速に進んでいます。

より多くの時間をオンラインで楽しむ

Netflix、Amazon Prime Video、Disney +、Rakuten TVなどのストリーミングサービスは、過去数か月で加入者が爆発的に増加しました。もちろん、再び家から出られることは心待ちにしています。それでもなお、これらの企業が成長の大部分を維持することは期待できるでしょう。私たちはこの期間に、膨大な範囲からいつでも好きな時に見たいものを簡単に見られることを知ってしまいました。家族やルームメートが他の何かを見たいと思っている場合でも同じです。外出規制が解けたとしても、すぐにそれを手放すことはないでしょう。同じことがeコマースにも当てはまります。近年eコマースは成長してきましたが、ここ数か月でさらに加速しています。新しいルーティンをフォローアップすればするほどそのルーティンは根強くなります。そしてより良いものは持続します。私たちは宅配便といった利便性に慣れているので、今後もショッピングの大部分をオンラインで行うでしょう。

コネクテッドリビングという新しい常識

パンデミックはいずれ収束することはわかっていても、今回生じた新しい行動の大部分はこの後も定着します。これは保険に影響を及ぼす顧客行動の変化にも当てはまります。私たちが現在経験しているのは、どのように生活し働くかという根本的な変化です。消費者は健康により関心を持ち、旅行や通勤を見直し、より多くの時間を家で家族と過ごし、あらゆる種類の新しいテクノロジーを日常に取り入れるようになりました。コネクテッドリビングという考え方はこれからの常識です。それは私たちの日常生活の枠組みを再定義しました。デジタルの先駆者だけでなく、一般の消費者もモバイルやオンラインサービスの利便性を一層実感しています。保険会社も同等のサービスレベルが期待されています。この傾向はすでに始まっており、目新しいものではありません。まさに今加速し生活に浸透しています。既存の保険会社はステップアップしこれまでの状況を打破する必要があります。そして安全性と信頼はこれまで以上に重要になるでしょう。

 

コロナの影響は日常を超えビジネスモデルに

前述のように、ロックダウン期間中に従来の流通モデルとデジタルモデルは厳密に吟味されました。多くの現存企業は、対面チャネルこそ重要な差別化要因と見なしてきましたが、この危機の中では何の力も発揮できず、さらに言うと脆弱さえしたでしょう。従来の流通モデルは、競争力と持続可能性がないことが明らかになったのです。その上、状況の変化や物理的でない世界への迅速な対応が十分でありませんでした。現存企業はリモートビジネスを行う上で重大な問題を経験しました。一方デジタルモデルは、これらの困難な状況でも機能し成功することが証明されています。デジタルモデルは危機から守られ、将来の保証があるといえるでしょう。リモートでの取引を可能にする高度なテクノロジーが従来のモデルをリードしています。これらの違いがこれほど明確になったことはかつてありませんでした。

  • ロックダウン期間中、中国最大のオンライン保険会社であるZhongAnは、トップラインとボトムラインの両方で成長を遂げました。 ZhongAn Tech GlobalのCEOであるBill Songは、コロナが中国の保険業界にかなりの打撃を与え、実質的に中国市場の全ての現職者の売上が減少する中、ZhongAnはトップラインにおいて33.7%、ボトムラインにおいて122.4%の成長を達成したと述べています。
  • オランダ初の100%オンライン保険会社であるInSharedは、ロックダウン中に販売記録を樹立しました。CEOであるFleur Dujardinは、「私たちは幸運なことに、目覚ましい成長を遂げ、売上と顧客満足度を上げることができています。人々はますます、適正な価格で魅力的なオンライン商品を求めています。その上で、顧客は私たちのユニークな提案を高く評価しました。今年、請求の支払いに必要のないお金はお客様に返金されます。」と述べています。
  • 「Getsafeでは、すでに物理的な販売からオンライン販売へのシフトが見られます。コロナの発生以来、当社の販売数は20%増加しこの月は歴代最高記録でした」と共同創設者兼CEOであるGetsafeのChristian Wiensは述べています。
  • アルゼンチンのデジタル保険会社iúnigoのCEO、Federico Malekは、「ロックダウンの最初の数週間は、従来の企業と同じように苦しみました。しかし8週間で完全な回復を遂げました。新しいビジネスはロックダウン前と同様ですが、従来のビジネスはロックダウン前と比べてマイナス40%です。もちろん、これは私たちがシェアを獲得していることを意味します。」と述べています。
  • 米国のデジタル生命保険会社として著名なLadder のCEO兼共同創設者であるJamie Haleは、「はい、私たちは以前に増す速度でマーケットシェアを獲得しています。 eコマースで起こっていることが保険でも起こっています。」と述べています。

 

危機が鳴らす警鐘

保険業界のデジタル化の必要性は今に始まったことではありません。しかし、コロナの発生により、内外部において保険のデジタル変換がどれほど遅いかが明らかになりました。ますます多くの保険会社の幹部が実感していることが、たいていの保険会社の幹部との会話からわかります。今やデジタルであることは最も重要なことです。現在の危機は多くの保険会社に警鐘を鳴らしています。内外部において、より結びつきがあり敏捷なデジタルトランスフォーメーションを加速させる必要があります。彼らは戦略的重要性を認識しており、緊急性もはっきりと感じています。もはや後回しにする選択肢はなくなったと認識しています。デジタルトランスフォーメーションは間違いなく転換点に達しています。

サンクトガレン大学、BavariaDirekt、Versicherungskammer Bayernの調査から得られた、いくつかの興味深い結果をご紹介します。

  • パンデミックの結果として、保険業界でデジタル化が急増することに70%以上が同意しています。
  • インタビューした保険会社の幹部約50%が、デジタルトランスフォーメーションプロジェクトへ迅速にシフトしていることが分かりました。一方では在宅勤務の改善に焦点を当て、他方ではデジタル顧客確認、電子署名、デジタルアドバイス用ツールといった流通チャネルのデジタルソリューションに焦点を当てています。
  • 27%が既に新しいデジタルプロジェクトを開始しており、特にコミュニケーション(Microsoftチームやチャットボット)や、ビデオ識別、ウェビナー、アプリケーションの非接触提案といった、流通に対する新しいイニシアチブを促進するための取り組みを始めています。
  • 過半数(57%)が「パンデミックは企業文化を永続的にデジタル化の方向に変える」と認識しています。
  • この危機が保険会社に新しいデジタルビジネスモデルの可能性を示していると44%が同意していますが、デジタルプレーヤーがコロナにより取引を増やしたと考えているのはわずか14%で、デジタル販売がブローカーやエージェントに取って代わることに完全に同意しているのはわずか17%です。

 

インシュアテック企業への影響は何か?

保険会社の幹部はオンライン化の加速に対して、インシュアテック企業が重要な役割を果たすことができると認識しています。しかし、これは全てのインシュアテック企業にとって黄金時代が始まったという意味ではありません。また今回の危機は、これまで以上に、どのインシュアテック企業が適切な理解を得ているのか、特定の分野でデジタルトランスフォーメーションを加速させるためにどのインシュアテック企業と連携すべきなのかを明確にするでしょう。これまでに明らかになった、具体的なニーズに対応するインシュアテックを7つのカテゴリに分類しました。これまで以上に関連性の高い7つのカテゴリーです。

1. HEALTH PLUS
2. SMART HOME
3. PERSONAL MOTOR
4. WHITE LABEL OFFERS
5. PLATFORM SOLUTIONS
6. DIGITAL INTERACTION
7. EVERYTHING DATA

 

次回以降は、この7つのカテゴリをご紹介していきます。どうぞお楽しみに。