保険事業の主導権を失うリスクに晒されている保険会社―保険業界向けカンファレンスを通じたアンケート結果を公表

ワルシャワ/ケルン/東京/パリ、2021年7月5日:
テック企業やインシュアテック企業との競争激化に直面した保険会社は、今プロセスの自動化に目を向けているが、自動化の取り組みは一貫性のないデータ構造やレガシーシステムに阻まれている。また、ITシステムの品質については、高い不確実性がある。これらが、「Innovation in Insurance」カンファレンスに参加した約1,000人を対象としたアンケート結果で明らかになりました。

保険業界には不確実性が蔓延しています。保険市場に存在する事業者は、保険会社が保険事業の主導権を失うことを予測しています。今後10年間で保険事業を最も牽引するのは誰かという質問に対して、ソラーズコンサルティングが主催した「Innovation in Insurance」という保険業界向けカンファレンス参加者のうち、29%がインシュアテック企業と答えています。また、26%の参加者は大規模なハイテク企業が保険事業をけん引する主たる存在になると考えています。保険会社は3位で、18%強の参加者が保険会社と回答しました。

「保険会社は市場をリードするのに一番適した立場にいるにもかかわらず、インシュアテック企業や大手ハイテク企業を恐れているようです。保険会社がデジタルイノベーションを推進し続ければ、保険業界自体がバリューチェーンの中で収益性を失っていくことを避けることができます。一方で、保険会社が顧客の囲い込みを行わず、顧客データを活用できなければ、保険ビジネスのコントロールを失うリスクがあります。顧客との関係をめぐる競争は激化しています。この競争に勝つためには、保険会社はすべてのタッチポイントで優れたカスタマーエクスペリエンスを提供し、効率性を高める必要があります。そのために今後、ビジネスプロセスの自動化に力を入れることが予想されます。保険会社は、顧客へのアクセスを可能にするITアーキテクチャを構築するでしょう」と、ソラーズコンサルティングのマネージング・パートナーであるミハウ・トロヒムチュク氏はコメントしています。

クラウド:高い変革コストを懸念している保険会社

保険業界では、クラウドがますます重要な役割を果たすようになるという共通認識が確かに存在しています。彼らはデータドリブンのビジネスモデルを確立したいと考えていますが、サイロ化したITアーキテクチャや規制が障壁となっています。これまで保険会社は小規模なアプリケーションでクラウドをテストしてきましたが、現在はインフラ全体をクラウド化していくことにシフトしています。カンファレンス参加者の50%は、小規模なアプリケーションを導入する前に、まず基幹システムをクラウドに移行すべきだとしており、39%は小規模から始めることを希望しています。また、将来的にはクラウドコンピューティングが主流になり、保険会社はSaaSベースの基幹システムを導入すべきだと考えていますが、トランスフォーメーションコストやデータコンプライアンスの問題から導入に踏み切れていません。それを証明するように、アンケートの中ですべての企業がクラウドに移行していない理由を尋ねたところ、27%がSaaSソリューションのコストが高いからと答え、23%がコンプライアンスやデータ保護のリスクを恐れていると答えました。

保険会社の66%がビジネスプロセスを自動化

コスト管理および良いカスタマーサービスを提供するために、保険会社はプロセス自動化に多大な労力を費やしています。アンケート回答者の66%が、今後3年間で特定のプロセスを自動化すると答えています。自動化を全く計画していない保険会社も10%あり、9%は自動化するプロセスをまだ選択していないと答えています。

自動化の中でも、特にクレームハンドリングプロセスが自動化の対象として注目を浴びています。アンケート回答者の35%がこの分野に注力すると答えていますが、そのうち27%は処理する業務ボリュームの大きいプロセスでのみ自動化を進めるとしています。保険業界の自動化の取り組みにおいて、セールス、ポストセールス、アンダーライティングの重要度は低く、それらのプロセスの自動化が必要だと認識している回答者は9%から19%となっています。

「新しいテクノロジーは、保険会社に多くのチャンスをもたらします。一方で、業界は既存のIT環境の問題に対処する必要があります」と、ソラーズコンサルティングのマネージング・パートナーであるマルチン・プルタ氏はコメントします。 「デジタルトランスフォーメーションが加速する一方で、業界は未だに多くの内部の問題に悩まされています。保険会社は活動を加速させていますが、よく考えた上で推進していく必要があります」と付け加えます。

今回のアンケートでは、「データ活用」および「コストとリスクの最適化」が最も重要な課題であることがわかりました。自社にとって最も重要な課題は何かという質問に対して、15%がコストとリスクの最適化だと回答し、12%がデータ活用に関することだと答えています。保険はデータを活用したビジネスですが、保険会社はそれを、より高いレベルに引き上げるのに苦労しています。完全にデータドリブンのビジネスアプローチを構築する過程での主な障害について尋ねたところ、34%が一貫性のないデータ構造、28%がデータ保護法、26%がサイロ化したITアーキテクチャと指摘しています。

保険業界では、ストレージ容量の増加、コンピュータの性能向上、新しいツールの導入などにより、ビジネスの根本的な変革が始まっています。しかし、保険業界は既存の構造に阻まれており、保険ビジネスの変革を阻む最大の要因は何かという質問に対し、35%が時代遅れの基幹システム、33%がリーダーシップと回答しました。

コード品質の不確実性

新旧のシステムが多数存在するため、保険会社の間ではコードの品質に関する不確実性が高くなっています。コードの品質を確保することで、保険会社はIT障害を回避することができますが、そのために取り組むべき課題が多くあることは明らかです。回答者の53%が、金融機関はいくつかの分野で改善が必要だと答えており、すべての商品ラインで良い状況にあると考えているのはわずか13%です。

「保険会社は、ソフトウェアを原因とした業務中断により、年間数百万ユーロの損失を被っています。そのため、ソフトウェアの品質保証は重要な課題となっています。保険会社にとって、自社のシステムを開発・維持し、新しいソリューションを受け入れることが極めて重要です。そのために、保険会社には迅速な開発と高いコード品質を可能にするDevOpsベースの手法の導入を期待しています。しっかりとした品質保証があれば、保険会社はお客様により良いサービスを提供することができます。また、クラウドベースのシステムはメンテナンスを最小限に抑え、すぐに利用可能なため、クラウドへの移行が進むでしょう」とトロヒムチュク氏はコメントしています。   

また、「保険業界は、ビジネスの大きな変革期を迎えています。同様の変革は多くの業界で起こっています。販売、保険金請求、契約管理、資産管理、レポーティングなど、すべてのビジネスプロセスが影響を受けます。新しいデータ構造の構築、コアITの近代化、クラウドへの移行、自動化などが重要な課題となるでしょう」とプルタ氏はコメントしています。

 


「Innovation in Insurance」カンファレンスやアンケートの詳細は、「Innovation in Insurance Online Days – Post conference booklet」(英語版のみ)に掲載されていますので、ぜひご覧ください。「Innovation in Insurance Online Days – Post conference booklet」は、https://innovation.sollers.eu/からダウンロード可能です。(ダウンロードにはサイトでの無料登録が必要です。)

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出典:Sollers