金融立国シンガポールのInsurTech事情とは?!シンガポール最大のInsurTechイベントに参加してきました!

2017年9月後半にシンガポールで開催された、InsurTech(インシュアテック)のイベントに行って参りました!

50社ほどの企業が参画するシンガポールでも最大級のイベントです。

アジアの金融の最先端を走るシンガポールのInsurTech(インシュアテック)事情を知ることができましたので、ご紹介します。

 

会場は金融街のど真ん中!

会場は、Lattice80という、シンガポールのFinTechスタートアップのシェアオフィスとイベントスペースを兼ねた場所です。

 

Lattice80の建物は、金融街のど真ん中にあります。

金融街はチャイナタウンとマリーナベイ(有名なマリーナベイサンズがある場所です)に挟まれています。

少し丘を登ると、寺院や軒の低い建物が並ぶチャイナタウンがあり、少し海方向に移動すると、マリーナベイサンズなどのホテルがあるという面白い立地です。

 

Lattice80の周辺には、AXA・AIA・プルデンシャル生命などの大手保険会社のビルが軒を連ねています。東京海上日動のビルもあります。

また、日本のような保険ショップはありませんが、大手の生命保険会社が街角に保険販売の窓口を出しています。

日本だと考えられませんが、プルデンシャル生命もショップを出しています。

 

今後、日本でも増えてくると予想されている健康増進型の保険の販売が、既にシンガポールでは進んでいました。

 

 

【午前】注目のInsurTech企業が続々登壇!

会場内に入ると、イベントの受付は既に始まっていました。

大量の人でごった返しています。

Lattice80はビルの1フロアを占めています。

シェアオフィス側には、ソファがたくさんあるスペースもあり、過ごしやすそうです。

 

イベントスペース側で、朝の9:00から早速イベント主催者のOpeningRemarksが始まります。

なんと、ここから夜の19:00までぶっ続けで、スケジュールが組まれています。

 

シンガポールのライフネット生命【Singapore Life】

イベント最初の登壇は、Singapore Life CEOのWalter de Oudeでした。

 

CEOのWalterはかつて香港を拠点とするHSBC InsuranceのCEOを勤めていた人物です。

顧客の力がより強くなっていき、効率化が進む流れを感じ、SingaporeLifeの立ち上げに踏み切ったそうです。

Singapore Lifeは、2014年に創立された会社で、シンガポールで新しい生命保険会社を作る取り組みをしています。3年ほどの準備期間を経て、2017年に商品の販売を開始しました。

シンガポール版ライフネット生命とも呼べるでしょう。ただし、ライフネット生命とは商品構成やチャネル戦略が異なります。

 

まず、Universal Lifeと呼ばれる変額終身保険や、Stay Activeと呼ばれる健康だった場合にリワードがもらえる保険などを提供しています。

更に、設立当初から、プロ代理店経由での販売に取り組んでいます。

 

SingaporeLife CEOのWalterは、イベント中に何回か登壇していました。

イベント後半の登壇の際には、当時は未公開だったプロモーション映像も特別に放映してくれました。

現在は公開されており、こちら↓から見ることができます。

 

最近公開された日本のプルデンシャル生命のプロモーション映像にも、少し似ている部分があるので、比較してみると面白いですね。

 

保険業界の中間流通の変革を目指す【Stark Group】

次に登壇したのは、Stark Group CEOのMatthias de Ferrieresです。

CEOのMatthiasは、東南アジアを拠点とするP&C insuranceを経て、AXA Asiaでアクチュアリーとしての経験を積み、General Insuranceを勤めてから独立してStark Groupを設立しました。

 

先ほど紹介したSingapore Life CEOのWalterもそうですが、保険会社に長年勤めた人が数多くInsurTech(インシュアテック)に挑戦していました。

業界経験の豊富な方にとっても、チャンスがあり、魅力的な領域ということでしょう。

 

Stark GroupはIntermidiary、つまり中間流通に着目したサービスに取り組んでいます。

顧客と保険募集人(Agent)・保険仲立人(Broker)をつなぐ保険管理のサービスを提供しています。

具体的には、アプリ上で自分の担当の保険募集人とつながり、契約した保険を管理することができます。

 

二人の登壇が終わると、パネルディスカッションに移ります。

パネルディスカッションは、以下のメンバーでした。

 

  • モデレーター
    • HealthTechベンチャーであるMyDoc CEOのBethany Boll
  • パネリスト
    • P2P保険のBandboo CEOのAshley Kee
    • 保険比較サイトのGoBear Co-founderのMarnix Zwart
    • 同じく保険比較サイトのInsurance Market CEOのOtbert de Jong
    • オーストラリア最大手の保険会社であるIAGのインキュベーター兼ベンチャーファンドFiremarkのLynn Thompson

 

そうそうたるメンバーが、顧客の変化について、ディスカッションを交わします。

 

ここまでご紹介してきたように、新しい生命保険会社・保険代理店でInsurTech(インシュアテック)に取り組もうとしている会社・InsurTechのベンチャー企業・HealthTechのベンチャー企業など、InsurTechを軸に様々な立場の方が登壇されていることが印象的でした。

 

ここまでのプログラムが終わっても、まだ時間は11:00です。。

この後もKeyNoteとパネルディスカッションが交互に、”2日間”続きます。

 

 

【午後】ピッチやブースで最新のInsurTech企業のUIを体感

ランチは会場内で提供されていました。

バイキング形式で、豊富な種類のご飯を食べることができます。

参加者は、ご飯を食べながらディスカッションをしたり、登壇者を捕まえて話したり、各企業が出展しているブースを回ったりしています。

 

ブースの中でも特に注目されていた2社の企業をご紹介いたします。

 

日本では実現できない価格.comの保険版【GoBear】

1社目は、GoBearです。

GoBearの創業は2014年です。登壇していた企業の中では、比較的古い会社です。

 

[尾花政篤(写真左)、Rachel Teo氏(写真右)]

 

Marketing ManagerであるRachel Teoさん等が対応してくれました。

プロモーション用のグッズも豊富に揃えてありました。

また、最近は顧客に金融知識を学んでもらうための動画の作成・配信を開始しているようです。

モニターで見せてもらいましたが、かなり手をかけて作っているなという印象でした。

動画はこちらから見ることができます。

 

医療保険を自分でカスタマイズできる?!【UEX】

2社目は、UEXです。

UEXは、CEOのGrégoire Rastoulが、フランスのAXA生命や保険仲立人(ブローカー)などを経て、2016年5月に創業した会社です。

 

個人および中小企業にカスタマイズされた医療保険を提供しています。

何よりも、そのUIが衝撃的でした。

保障の種類別にバーが設けられており、そのバーを上下に動かすと簡単に保険金額を大きくしたり、小さくしたりできます。

更に、その結果をURLで保険募集人と共有することもできます。

CEO自ら、熱くプレゼンしてくれました。非常に勢いのある注目の会社です。

 

[尾花政篤(写真左)、Grégoire Rastoul氏(写真右)]

 

 

夕方からは、メインステージでのイベントと、サブステージでのピッチイベントの二つに分かれます。

 

サブステージでは、各企業が10分ずつピッチしていました。

InsurTech企業はもちろんのこと、InsurTechと関連の深いHealthTech企業や、ビッグデータ系の企業もピッチしていました。

1日で約10社もの会社がピッチをしました。

 

このタイミングになると少し人がばらけ始めますので、注目の企業の担当者を捕まえて、インタビューさせていただきました。

 

保険証券をいつでも簡単に確認できる【PolicyPal】

日本でも注目されているPolicyPalのDigital Marketingの担当者に話を聞くことができました。

 

PolicyPalは2016年に設立された、保険管理・購入サービスを提供する会社です。

顧客は自分の保険証券の写真をアップロードすることで、保険を一覧で管理して見ることができます。

更に、チャットボットで保険を購入することもできます。

ただ、Jason曰く、全ての保険を販売できているわけではないそうです。

特に生命保険の販売は現状、規制の問題で出来ていないそうです。

日本では禁止されていますが、PolicyPal経由で加入すると、割引を受けられるサービスもあるとのことです。

 

 

シンガポールの状況から予想される日本のInsurTechの将来

InsurTech(インシュアテック)に関わる様々な企業の方が集結するコミュニティが形成されていることが、非常に印象的でした。

最先端の取組みにチャレンジする人々が集まり、刺激しあってイノベーションを興していくプロセスを体感できました。

 

InsurTech(インシュアテック)に関する取り組みは、日本よりシンガポールの方が遥かに進んでいました。

しかし、これから多くのInsurTech(インシュアテック)企業が日本に現れてくることにも確信をもてました。

なぜなら、”日本もシンガポールもそこまで生命保険の事情は変わらない”からです。

 

シンガポールのInsurTech(インシュアテック)企業も保険業法に規制されています。

オンラインで販売できる保険商品は限定されています。

また、保険業界に携わる人の性質も似通っています。

元々、保険募集人だった方は、プレゼン力と現場の肌感を大事にしています。

元々、保険会社出身の方は、保険会社の事情も鑑みて、ビジネス戦略を考えています。

そして、顧客サイドに目を転じてみると、オンライン上で保険を購入する人は少ないようです。

 

こういった状況は全て、シンガポールでも日本でも同じです。

 

どれだけチャレンジする人を増やすか、ムーブメントを起こしていくかが重要だと改めて実感しました。

引き続き、日本のInsurTech(インシュアテック)を盛り上げるために、サイトを充実させていきますので、今後もご期待ください。

 

この記事を書いた人

尾花政鷹

尾花 政篤株式会社ALLINS 代表取締役社長

コンサルティングファームにて、保険業界を中心にマーケティング戦略・IT戦略の立案に従事した後、ALLINS(オールインズ)を創業。InsurTechJapanでは国内外のInsurTech(インシュアテック)の最新情報を発信。