保険代理店におけるInsurTech推進 〜企業代理店意見交換会での登壇内容〜

株式会社hokan代表取締役CEOの尾花政篤(@ShigeObana)と申します。株式会社hokanでは保険業界特化型のSaaS、hokan®を提供しています。

 

2019年12月13日(金)、第十回 企業代理店意見交換会にてパネルディスカッションの一環で、「保険代理店におけるInsurTech推進」というテーマで登壇させていただきました。

ありがたいことにご好評いただきましたので、登壇の書き起こしを掲載します。

 

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はじめまして。株式会社hokan 代表取締役の尾花と申します。まずは私自身と会社の紹介をさせてください。

 

以前はベイカレント・コンサルティングでITのコンサルタントとして、保険会社IT部門の投資管理やPMOに従事していました。

コンサルタントとして最も成長できたのが保険会社のプロジェクトだったこともあり、業界への恩返しがしたいという思いから、InsurTech(Insurance:保険 × Technology:技術)の領域で起業しました。

 

株式会社hokanは2017年8月に創業した会社です。

FinTech・InsurTechスタートアップが集まっている大手町のFINOLABにオフィスを構えています。

累計調達額は2億円で、これは国内のInsurTechスタートアップではjustInCaseさんに続いて2番目に多い金額です。

※先日、justInCaseは10億円の資金調達を発表しました。

株式会社hokanのメインサービスは、保険代理店向けシステムであるhokan®です。

hokan®は、”保険代理店に特化したSalesforce”と理解していただけると分かりやすいかと思います。

パソコンはもちろんタブレットやスマホアプリ(iOS・Android)でも使えます。

 

我々のサービスはhokan®だけではありません。他にも複数のサービスを展開しています。

なぜなら、弊社は”保険業界をアップデートする”というミッションを掲げているからです。

保険業界には大きく分けて3つのプレイヤーがいます。一般消費者・保険代理店・保険会社です。

まず、一般消費者と保険会社をつなぐ存在である保険代理店向けのシステムから提供をはじめました。

ゆくゆくは一般消費者や保険会社にもサービスを提供していき、業界全体をアップデートすることを目指しています。

 

弊社の他のサービスを申し上げますと、

保険代理店開業.com というメディアを運営しています。

保険会社や船井総研とも連携して、保険代理店開業の支援や経営支援を行っております。

 

また、InsurTechJapanというメディアも運営しており、国内外のInsurTech最新情報を発信しています。

InsurTechの商標も取得しているのですが、日本のInsurTechの発展に貢献するため無償公開しています。

 

これ以外にも、詳しくはお話できないのですが、保険会社やInsurTechに参入を検討している企業へのコンサルティングを行っています。

 

 

さて、ここから本編です。

InsurTechJapanのようなメディアを運営していることもあり、保険代理店の方々とお話させていただいていると、よく以下のようなご質問をいただきます。

「保険はAIが売るようになるのですか?」「保険営業はAIに置き換わるのですか?」「保険営業という職はなくなるのですか?」

こういったご質問です。

 

私はこのようなご質問に対して、次のようにお答えしています。

ITコンサルタントだったときにAIやビッグデータの事業に関わりがあったこともあり、AIの現状はある程度把握しているのですが、今の技術では保険営業をAIに置き換えることはできません。

巷では2045年にはAIが人間の能力を超える(=シンギュラリティをむかえる)、というようなことも言われていますし、将来は分かりません。しかし、少なくとも、ここ10年ではAIが保険を販売することは絶対にないでしょう。

 

世界のInsurTechの状況をみても、AIによる保険販売は限定的であることが分かります。

世界のAI保険で一番有名なのはスマホアプリで住宅保険にチャットで加入できるLemonadeでしょう。

そして国内ではLINEほけんjustInCaseなどがAI保険と言えるかと思います。

こういったAI保険は、こちらの図にあるように、保障/補償が少額かつ生命保険の一部と損害保険だけに留まっています。

 

保険は購買頻度が少なくリスクに備える商品であるため、保障/補償金額の大きかったり人の生死に関わるような重要な保険については、「人に相談して決めたい」という感情が働きやすいのでしょう。

 

では、

AIと人の関係は、どのようなものが理想となるのでしょうか?

 

海外の事例を1つだけ紹介させていただき、その理想像を考えていければと思います。

ドイツ発のwefoxというブローカーの仲介プラットフォームを提供している会社があります。

日本円で150億円以上を調達しており、少し前はSBIと組んで日本に進出しようとしていました。

 

さて、wefoxはスマホアプリを提供しています。

wefoxのアプリの一番下のメニューバーの左から2番目のContractsというところを押すと、自分の契約情報を一覧で見られます。

また、保険の追加購入をすることもできます。

スマホアプリが保険の総合的な窓口となってるわけです。

 

最初にアプリ内でサインをすると、保険営業(正確には保険ブローカー)が1人割り当てられます。

自分の保険に関する権限をブローカーに渡すことができ、保険営業はユーザーに代わって保険に関する様々な手続きを代行できます。

保険営業はビデオチャットで商談を行い、そのままビデオチャットで契約締結まで可能です。

アプリのメニューバー真ん中のMessegesというところを押すと、保険営業とメッセージのやり取りをすることができるようになっており、いつでも保険についての相談ができます。

 

このように接点はスマホアプリですが、裏には”人”がいて「保険については”人”に相談したい」というニーズを満たしているわけです。

さらにすごいのは、こちらの画面です。

こちらは保険営業が操作する画面で、1人の顧客の情報が表示されています。

画面右上にグラフがあるのが分かりますでしょうか。

AIが顧客の情報を分析して、「顧客がどの種類の保障/補償が必要か」をグラフで示してくれているのです。

 

つまり、”人”をAIが支援しているということです。

 

wefoxはONEというスマホ完結型保険の会社を買収しています。

ONEはLemonadeと同じで保険をチャットで購入できるスマホアプリを提供しています。

加入した保険の情報はアプリ内で見られますし、請求もチャットで可能です。

 

wefoxとONEは非常に上手く連携しています。

wefoxの保険営業が、顧客をONEに誘導しているんですね。

少額の補償の保険は請求頻度も高くなるので、人が対応するとかなりの工数を取られます。しかし、少額のため手数料は低いです。

こういった保険については、”人”が対応するのではなく、スマホアプリに誘導してしまっているんですね。

 

wefoxとONEの事例は、”人”と”AI”が得意なところを分担しながらコラボできている理想的な将来像と言えるでしょう。

 

さて、翻って、日本国内の保険代理店の現状はどうでしょうか?

 

個人情報の取り扱いの同意書、保険商品のご案内にあたって、権限明示など、沢山の書類があります。

 

そして、最近では意向把握シートが商談の度に発生します。

 

代理店の規模が大きくなればなるほど、こういった紙の枚数は増え、1日だけでもかなりの数になります。

大量の紙はこのようにファイリングされ、、

 

そして、キャビネットに保管され、キャビネットが足りなくなると、別で借りている倉庫に保管することになります。

 

システムの状況はどうでしょうか。

これはとある代理店の例ですが、システムが混在しています。

複数の部署で使うCRMが異なっており、データの連携が完全には上手くいっていません。

また、共同GWからデータを取り込んでいるCRMで共同GWのデータが正確に取得できておらず、そのCRMから他のCRMに取り込んだデータも汚くなってしまっています。

その問題を解消するため、名寄せシステムを設けているのですが、そのシステムだけでも数千万円といったお金がかかります。

手数料データの計算も紙からデータを入力する必要があったり、かなりの時間がとられています。

 

先程お話したようなwefox・ONEのような理想を目指したいところですが、まずは地道な改善が必要になるだろうと考えています。

抽象的にはなってしまいますが、以下のような方向性を目指すべきではないでしょうか。

 

AIをつかったりデータを分析していくためにも、まずはデータを綺麗にしなければなりません。

データを綺麗にするためには、既にもっているデータはもちろんですが、新しく入ってくる入力データから綺麗にする必要があります。

入力データを綺麗にするためには、先程のwefoxの例のようにデータがどのように分析され、自分に役立つのかを示すなど、データの入力を義務付けるのではなく意義付けることが有効でしょう。

そして、システムの間にデータの加工が必要になったり、人の作業が必要になったりすると、ミスが発生しやすくなります。

そのためにもシステムをクラウド化し、システム同士をAPIでつないでいく、ということも必要です。

また、よく言われることですが、業務に合わせてシステムをカスタマイズしてしまうと、「開発が一向に終わらない」ということにもなりかねません。

ベストプラクティスが確立しているシステムに合わせて業務を変えていくのも重要です。

 

最後になりますが、私はこれからも保険代理店が非常に重要な役割を果たすと考えています。

Google/Amazon/Facebook/Appleは一般消費者に最も近い接点をとることで、世界に冠する巨大な企業になりました。

保険は”人”の力が必須ですから、保険業界においては保険代理店こそが一般消費者に最も近い接点をもっています。

保険代理店を起点に”保険業界をアップデート”していきましょう!

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講演の中ではご紹介しなかったのですが、hokan®は上記のような代理店の課題を解決するようなサービスを目指しています。

詳しくは以下のサービス紹介ページをご覧ください。

hokan®サービス紹介ページ

 

 

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この記事を書いた人

尾花政鷹

尾花 政篤株式会社hokan 代表取締役CEO

コンサルティングファームにて、保険業界を中心にマーケティング戦略・IT戦略の立案に従事した後、株式会社hokanを創業。保険代理店に特化したSaaSや、保険会社向けコンサルティングを提供中。InsurTechJapanでは国内外のInsurTech(インシュアテック)の最新情報を発信。